研究課題
若手研究(B)
レジン-象牙質接着の長期耐久性を向上させるためにこれまで様々な研究がなされてきたが、依然として継時的な劣化を防ぐことができないのが現状である。本研究では被着体である象牙質に焦点をしぼり、象牙質そのものを強化することを最終目的とする。象牙質のミネラル相は象牙質が幼弱なうちはコラーゲン線維周囲のみにあるが、象牙質が成熟する間にコラーゲン線維が架橋化し、線維内の水はアパタイト結晶に置き換わっていく。つまり、水が占めていた空間がアパタイト結晶に置き換わることとなり、ミネラル化したコラーゲンはほとんど水分を含んでいないことが知られている。ところで、象牙質接着において、酸によるエッチングはアパタイト結晶を溶解し水に置き換えることとなる。そして、次のステップにおいてこの水分はレジンモノマーに置き換えられることで、象牙質接着が成立していると考えられている。しかしながら一方で、これらのレジンモノマーは、コラーゲン線維間に入るには大きすぎ、水とは置き換わることができないという報告もある。これが事実だとすると、レジンモノマーが入り込んでいない象牙質コラーゲンは、内在性の加水分解酵素により加水分解され、結果として象牙質接着耐久性の低下が懸念される。そこで、本年度は、象牙質コラーゲンのサイズ排除能を確認することを目的とした。方法としては、ゲル濾過クロマトグラフィーを応用し、カラム内に象牙質パウダーを充填し、象牙質コラーゲンのサイズ排除能を研究した。その結果として、分子量1000以下の分子は自由に象牙質コラーゲン線維内にはいることが確認され、分子量10000を超えると、侵入が阻害されはじめ、分子量66000を超えると完全に侵入することができないことを確認できた。これにより、コラーゲン線維内に入りうる分子量を決定することができ、さらに、レジンモノマーがコラーゲン線維間に入りうることが確認できた。
2: おおむね順調に進展している
ゲル濾過クロマトグラフィーを応用し、カラム内に象牙質パウダーを充填し、象牙質コラーゲンのサイズ排除能を研究し、結果として、カルボジイミドの分子量であればコラーゲン線維間に入ることができることが確認できた。また、レジンモノマーがコラーゲン線維間に入ることも確認できた。
カルボジイミドによるコラーゲン架橋化による象牙質の強化により、接着耐久性の向上がはかれるかを、微小引っぱり試験ならびに微小剪断試験を用いて評価していく予定である。
研究打ち合わせの費用が予定より少なかったことおよび、分析の外部委託をせず、自設備にて行ったため。接着性材料の購入。分析の依頼。ならびに学会発表、論文発表に関わる費用に使用予定である。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件)
Acta Materialia
巻: 9 ページ: 9522-9528
10.1016/j.actbio.2013.07.037