レジンー象牙質接着の長期耐久性を向上させるためにこれまで様々な研究がなされてきたが、依然として継時的な劣化を防ぐことができないのが現状である。本研究では被着体であるゾーゲ質に焦点をしぼり、象牙質そのものを強化することを最終目的とする。象牙質のミネラル相は象牙質が幼若なうちはコラーゲン周囲のみにあるが、象牙質が成熟する間にコラーゲン線維が架橋化し、線維内のコラーゲンはほとんど水分を含んでいないことが知られている。ところで、象牙質接着において、酸によるエッチングはアパタイト結晶を溶解し水に置き換えることとなる。そして、次のステップにおいて、水分はレジンモノマーに置き換えられられることができ、象牙質接着が成立していると考えられている。しかしながら一方で、これらのレジンモノマーはコラーゲン線維間に入るには大きすぎ、水とは置き換わることができないという報告もある。これが事実だとすると、レジンモノマーが入りこんでいない象牙質コラーゲンは、内在性の加水分解酵素により分解され、結果として象牙質耐久性の低下が懸念される。 昨年度までの2年間で、象牙質コラーゲンのサイズ排除能を確認し、分子量1000以下の分子は自由に象牙質コラーゲン線維内に入ることが確認された。現在臨床で用いられている、レジンモノマーは分子量1000以下のものがほとんどであるため、コラーゲン線維内に入り得ることが確認できた。本年度は、カルボジイミドを用いコラーゲンを架橋化する条件を決定し、象牙質接着耐久性への影響を検討を開始し、カルボジイミドが象牙質接着耐久性の向上に寄与する可能性が示唆された。
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