研究実績の概要 |
本研究課題では、内部に根管もしくは歯髄腔を有する歯冠部象牙質を光干渉断層装置(OCT)で観察する。根管治療時の髄腔開拡は、歯軸の方向やレントゲン写真上での歯髄腔の位置を参考にしながら行われる。しかし、歯髄腔の狭窄や歯軸の頬舌的な傾斜等により歯髄腔の三次元的な方向の把握が困難な症例に遭遇することがある。髄腔開拡を誤った方向に進めてしまった場合に穿孔が起きてしまう恐れがある。髄腔開拡時の穿孔は歯頸部付近に起きることが多く、その場合の予後は特に悪く、抜歯に至る可能性がある。また、歯髄に近接するう蝕治療の際、歯髄保存の成否は露髄の有無に大きく左右される。事前にう蝕除去による露髄が予測される場合には非侵襲性歯髄覆罩(AIPC)を選択することも可能となる。また、生活歯における支台歯形成の際には歯髄腔までの距離が十分に確保できていることが予後を左右する。しかしながら術中に歯髄腔までの象牙質の厚みを把握することは困難で、偶発的に露髄し、抜髄が適応となる症例もある。 研究では、ヒト抜去下顎大臼歯10歯を用い、最大豊隆部で歯冠を切断し、切断面から髄角までの距離をMicro CT, CBCT, OCTを用いて計測した (SL, CL, OL)。SLをGold Standardとし, SL, OL, CLの3者間の相関関係を解析した。SL 2.33mm以下では、OCTで髄角を検出できた。SLとOL, SLとCL,CLとOLはそれぞれ強い正の相関関係を認めた (r =0.96, 0.87, 0.86)。残存象牙質が2.33mm以下の場合、OCTで髄腔の位置を把握できる可能性がある。またOCTとCBCT画像による計測値が正の相関関係にあることから、それぞれを複合させた画像診断により臨床的な非破壊検査に応用できる可能性が示唆された。
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