研究実績の概要 |
本研究課題では、内部に根管を有する象牙質を光干渉断層計(OCT)で観察する。外科的歯内療法を行うにあたり、根尖部の解剖学的形態の評価には、現在歯科用コーンビームCT(CBCT)を用いている。しかし、解像度やアーティファクトにより微細な解剖学的形態を検出することは困難なことが多い。そこで本研究では、OCTを用いてヒト上顎小臼歯根尖切断面の観察を行い、CBCT、歯科用実体顕微鏡(DOM)と比較し、その有用性を検討することを目的とした。 ヒト抜去上顎小臼歯6歯の根尖部をMicro CTで撮像し、Gold Standardとした。その後、CBCTで撮像を行った。それから、根尖部を1mm切断し、エチレンジアミン四酢酸 (EDTA) 製剤を塗布後、生理食塩水で洗浄した。切断面にメチレンブルー染色を行い、DOMとOCTで観察し、根管数の検出精度を評価した。この操作を3回繰り返し、最終的には根尖から3mmの切断面の観察を行った。 結果は、OCT、CBCT、DOMによる根管数の検出精度はそれぞれ0.89、0.78、0.83であった。これらの間に統計学的有意差は認めなかった (p>0.05, Wilcoxon test with Bonferroni correction)が、OCTによるものが最も高い検出精度を示した。 CBCTで検出できなかった微細な根管を、OCTにより検出することができた。CBCT撮像時、歯根周囲組織の影響により、生体においてはさらに検出困難となる可能性がある。一方、OCTは根尖切断面の表層部の解剖学的構造物を検出でき、リアルタイムで非侵襲的に観察できる。OCTは術中の使用が可能であり、外科的歯内療法における根尖部形態の評価に有用である可能性が示唆された。以上のように、歯根端切除標本の観察において、根尖切断面の観察にOCTが有用である可能性が示唆された。
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