膜輸送担体(トランスポーター)は細胞膜を介した物質輸送に与るタンハク質で、細胞の生存維持や特異機能の発現に寄与する事か知られるが、歯髄での発現解析は全く行われていない。また、プロスタグランディン(PG)E2は歯髄炎の代表的化学伝達物質であり、トランスポーターによる細胞外輸送を経てレセプターと結合することで機能を発揮すると考えられるがその輸送機構は歯髄に限らず不確定である。 申請者はこれらの点の解明の端緒として、ラット歯髄炎モデルにおける各種トランスポーターおよびレセプター群の遺伝子発現解析あるいは免疫組織化学的解析を行い、炎症歯髄におけるトランスポーター群の役割について、特に PGE2 輸送機構に着目して検索しようとするものである。 平成25年度は上記の研究目的を達成するための端緒として、歯髄炎モデルラットを作製後、PGE2を輸送するトランスポーターであるmultidrug resistance associated protein 4 (Mrp4)およびprostaglandin transporter (Pgt)に着目した遺伝子発現量についてリアルタイムPCR法を用いた正常時との比較解析を行った。その結果、LPS貼付後12時間でPgtのmRNAレベルが著明に増加したことが確認された一方で、Mrp4では変化を認めなかった。また、各トランスポーターの局在を蛍光免疫法で解析したところ、血管内皮細胞に発現しており、さらに、PGE2合成酵素であるmPGESも血管内皮細胞に発現している事が明らかとなったことから、血管内皮細胞でPGE2が合成され、各トランスポーターによって膜輸送されている可能性が示唆された。
|