膜輸送担体(トランスポーター)は細胞膜を介した物質輸送に与るタンパク質で、細胞の生存維持や特異機能の発現に寄与することが知られているが、歯髄での発現解析は全く行われていない。また、プロスタグランジン(PG)E2は歯髄炎の代表的化学伝達物質であり、トランスポーターによる細胞外輸送を経てレセプターと結合することで機能を発揮すると考えられるがその輸送機構は歯髄に限らず不確定である。 申請者はこれらの点の解明を緒端として、ラット歯髄炎モデルにおける各種トランスポーターおよびレセプター群の遺伝子発現解析あるいは免疫組織化学的解析を行い、炎症歯髄におけるトランスポーター群の役割について、特にPGE2輸送機構に着目して検索しようとするものである。 H25年度には、血管内皮細胞でPGE2が合成され、multidrug resistance associated protein 4 (Mrp4)あるいはprostaglandin transporter (Pgt)によって膜輸送されていることが解明された。 H26年度には、ヒト歯髄組織でMRP4、PGTが象牙芽細胞および血管内皮細胞に発現しているだけでなく、PGE2特異的レセプターであるEP2およびEP4も同部位に発現していることを確認した。 H27年度には、さらに発展させ、EP2およびEP4の歯髄での機能を解明するために各アゴニストを使用することで、遺伝子発現解析と免疫組織学的解析を行った結果、EP2は血管新生への寄与と、EP4では石灰化へ寄与している可能性が示唆された。
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