本研究は、象牙質知覚過敏抑制材で処理した象牙質に対する口腔内細菌の付着性に関する研究である。最近の象牙質知覚過敏抑制材の多くは、薄層被膜を形成することにより象牙細管開口部を封鎖し知覚過敏を抑制する材料が主流である。しかし、象牙質表層へのポリマーの沈着やモノマーが浸透して被膜が形成されることから、象牙質表層の物理化学的性状に変化をきたすことが考えられる。そこで本研究では、各種象牙質知覚過敏抑制材で処理した象牙質の表面性状を調査研究することにより、細菌付着抑制効果のある新規象牙質知覚過敏抑制材の開発を目的としている。 本年度は、各種象牙質知覚過敏抑制材で処理した象牙質表面への口腔内細菌の初期付着について予備実験を行った。口腔内細菌として、Streptococcus mutansを用いた。まずは、ヒト抜去歯象牙質を用いて象牙質知覚過敏症を発症する露出根面の再現に取り掛かった。実際には2000番シリコンカーバイドペーパーで研磨した後、超音波処置をすることで、スミヤー層は残存しているが、象牙細管が部分的に開口している状態を作り上げ、象牙質知覚過敏症を発症する象牙質モデルとして実験を行った。 また、臨床の現場で頻繁に行われる処置として、各種象牙質知覚過敏抑制材塗布後のコンポジットレジンの接着強さの影響について調べるため、微小引張試験ならびに接着界面ならびに破断面のSEM観察を行った。
|