研究の最終目標は,根尖性歯周炎の治癒メカニズムを解明することによって,臨床効果の高い治療法の開発を目指す。本研究では,ラット根管治療モデルの病巣治癒期に発現が亢進するInterleukin-1α(IL-1α)と細胞外基質ラミニンの骨芽細胞に対する相互作用に着目した先行研究の結果をもとに,根尖部歯周組織の再生(骨再生)に対するIL-1αとラミニンの有用性をin vitroおよびin vivoで検討した。本研究期間内で以下の成果が得られた。マウス骨芽細胞MC3T3-E1細胞において,ラミニンで前処理した後,IL-1αで刺激すると,①FAKおよびmAPKsのリン酸化が増強される,②collagen type1のmRNA発現が増強される。また,in vivoラット根管治療モデルにおいては,分子イメージング技術を応用することによって,根尖炎症部の炎症の可視化および定量化する手法を確立した。そして,IL-1αおよびラミニンで根管処理すると炎症の軽減,病巣骨吸収部が回復する傾向を確認した。以上の結果から,根尖性歯周炎の治癒メカニズムにおけるIL-1αおよびラミニンは有用なターゲット分子である可能性が高いことが示唆された。
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