近年、可能な限り生活歯髄を保存しようとする機運が高まってきており、どのような歯髄の状態なら歯髄保存が可能なのかを正確に知ることは非常に重要な課題である。本研究では、免疫系に対して調節作用を有する因子の一つであるインターフェロンγ(IFN-γ)に着目し、歯髄組織の自然免疫応答におけるIFN-γの役割について検討を行い、以下のような結果を得た。 1.TLRリガンドのみで刺激した歯髄細胞においてIL-6およびCXCL10の産生が認められ、その産生量はIFN-γと共刺激させることで相乗的に増加した。 2.NODリガンドのみで刺激した歯髄細胞においてIL-6およびCXCL10の産生は認められなかったが、IFN-γとの共刺激によりIL-6、CXCL10ともに産生が認められ、その効果はIFN-γ 濃度に依存して増大した。 3.免疫組織化学的解析により、炎症歯髄組織においてIDO陽性細胞の局在が確認された。 4.IFN-γで刺激した歯髄細胞において、IDOタンパクの発現が認められ、さらにその発現量はIFN-γとPam3CSK4,LPS,iE-DAP,MDPとを共刺激させることで増強された。 5.IFN-γで刺激した歯髄細胞にIDOインヒビターを作用させることで、CXCL10の産生量が濃度に依存して減少した。 これらの結果より、IFN-γが歯髄細胞のIDO発現や IL-6 CXCL10産生に影響を与えていることが明らかとなり、IFN-γが歯髄炎における歯髄細胞の生体反応において重要な役割を果たしていることが示唆された。 歯髄炎の病態形成におけるIFN-γの役割が明らかになることで、今後歯髄炎の病態解明だけでなく、歯髄炎の診断や新たな治療法の開発にも応用が期待できる。
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