研究概要 |
近年、発癌や動脈硬化症の発症に慢性炎症が関与することが注目されている。根尖歯周組織に生じた骨欠損の再生を確実にするためには、感染制御と再生療法技術に加え、慢性炎症制御が重要と言える。そこで炎症の主たるシグナル伝達経路であるNF-κBシグナルを抑制するステロイド受容体コアクチベーターのMacromolecular Translocation Inhibitor II(MTI-II)に着目し、骨芽細胞様細胞における炎症応答抑制効果について検討した。 今年度の研究においての研究実績としては、ヒト骨肉腫細胞MG-63にNF-κBルシフェラーゼ発現プラスミドを遺伝子導入し、MTI-IIの酸性アミノ酸領域を利用したペプチド(MTI-IIペプチド)で前処理した後、炎症性サイトカインTNFα(10 ng/ml)で刺激後にルシフェラーゼ活性を測定し、NF-κBの転写活性を分析した。MG-63細胞をTNFαで刺激すると、NF-κBの転写活性が著しく上昇した。しかし、MTI-IIによってNF-κBの転写活性の上昇が解除・抑制された。次に、MTI-IIペプチドとTNFαで刺激後、全RNAを調整し、NF-κB標的遺伝子としてMatrix metallopeptidase-2,9 (MMP-2,9)とInterleukin-6,8 (IL-6,8)のプライマーを用いてリアルタイムPCRを行い、発現を分析した。その結果、MTI-IIによってMMP-9やIL-6の発現が抑制されることがわかった。以上より、MTI-IIは抗炎症剤として有効であることが示唆された。
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