研究実績の概要 |
重篤な根尖性歯周炎では大きな骨欠損を伴い, その再生には適切な歯内治療を行っても長期間を要することが多い.そこで骨の再生を確実にするためには, 感染制御と再生療法技術に加え, 慢性炎症制御が重要と言える. 今回,炎症の主たるシグナル伝達経路であるNF-κBシグナルを抑制するMPAIDsを化学合成し, BMP誘導性の骨芽細胞分化に対するMPAIDsの影響について検討した.マウス骨芽細胞様細胞MC3T3-E1細胞にNF-κBルシフェラーゼ発現プラスミドを遺伝子導入し, MPAIDsで前処理した後, 炎症性サイトカインTNFα(10 ng/ml)で刺激後にNF-κBの転写活性を分析した. また, MPAIDsとTNFαで刺激後, NF-κB標的遺伝子としてMMP-9とIL-6,8の発現を分析した. さらに, MPAIDsとTNFα, BMP4(10 ng/ml)で刺激し,アルカリホスファターゼ(ALP)活性測定を行った. また, ウェスタンブロット法によりSmad1/5のリン酸化を分析した.その結果,細胞をTNFαで刺激すると, NF-κBの転写活性やMMP-9とIL-6,8の発現が著しく上昇したが, MPAIDsで刺激するとNF-κBの転写活性やNF-κB標的遺伝子の発現増加が解除・抑制された,さらに, BMP4刺激によって著明なALP活性上昇が誘導されたが, TNFαで刺激するとその活性は抑制された. しかし, MPAIDsで刺激した細胞ではその抑制が解除された. ただし, Smad1/5のリン酸化には変化がなかった.今回の結果より,TNFα刺激によるNF-κBシグナルを抑制することで, BMP誘導性の骨芽細胞分化を促進することから, MPAIDsがBMPによる骨形成の有効な補助薬となる可能性が示唆された.
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