研究課題
若手研究(B)
エナメル質の機械的特性を評価するには,エナメル質の構造の大部分を占めるエナメル小柱に限局したナノレベルの評価方法を行う必要がある.本研究の目的は,エナメル質の構造の大部分を占めるエナメル小柱にナノレベルの物性試験を行いエナメル質の物理学的指標を作成することである.健全な小臼歯からエナメル質を切り出し,エポキシ樹脂にて包埋したエナメル質を小柱方向と垂直に研磨剤を用いて0.05 umまで鏡面研磨しエナメルサンプルとした.また,均一材料である溶融石英を標準試料として用いた.走査型プローブ顕微鏡(SPM)オプションのナノインデンターにより,エナメル小柱に限局したナノインデンテーションが可能になる.本研究では,直径0.5umと1.0umの球状ダイアモンド圧子を用いてひずみを深さ方向に連続的に増加させることで,最大荷重10mNで応力ひずみ曲線を作成した. SPM に直径0.5umまたは1.0umの球状圧子を用いて,溶融石英表面およびエナメル小柱を走査型プローブ顕微鏡で観察しながら圧子接触深さの実測値hcおよびContact Stiffnessを算出した.溶融石英データに基づき球状圧子形状の校正を行い,得られた実測値と近似式の曲率が一致したことから,直径0.5umまたは1.0umの球状圧子の校正は正しく計算された.研究により得られたエナメル質の応力ひずみ曲線は比例限,弾性限が明らかである.荷重に対する接触面積の大きい直径1.0umの圧子で弾性領域を測定し,接触面積の小さい直径0.5umの圧子で塑性領域を測定したところ,直径0.5umおよび1.0umの球状圧子による接触面積が連続していることから,圧子の接触深さに対して連続したひずみが与えられていた. 以上により,ナノインデンテーション法でパーシャルアンローディングを行うことで,エナメル質においてナノレベルで応力ひずみ曲線が適用できることが明らかになった.
2: おおむね順調に進展している
ほぼ計画通り行われている.
球状圧子を用いたナノインデンテーションによって求められたエナメル質の応力ひずみ曲線は,エナメル質と同等の物性を必要とする予防または修復材料開発の物理的指標となりうる.今後は,エナメル質に物理化学的な処理を行い機械的特性の変化を応力ひずみ曲線を用いて直接比較する.
消耗品など研究を進めるにあたり今後も購入予定があるため。ナノインデンテーションに必要なチップ、データ解析用PCおよびソフトウェア等の購入。また、サンプル作成に必要な機器、材料、観察用ルーペ等の購入を予定している。
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Nanomedicine: Nanotechnology, Biology, and Medicine
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