研究課題/領域番号 |
25861811
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
松岡 海地 東京歯科大学, 歯学部, その他 (10637797)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 歯髄覆罩材 / Tenascin-C / 機能性マトリックス |
研究概要 |
歯科治療において可能な限り歯髄を残すことが望まれており、歯科臨床では歯髄を効果的に治癒させる新しい覆罩材が期待されている。覆罩材は生体親和性が高く、血液・滲出液を吸収かつ止血効果を有し、さらに歯髄幹細胞の増殖・分化する場を提供し、歯髄の石灰化を促すことが歯髄保護の成功率を上昇するものと考えられる。一方で細胞外基質の一つであるTenascin-C (TN-C)は創傷治癒時に種々なる組織で発現することが報告されており、歯髄の断髄面においてもTN-Cが発現していることが明らかになっている。申請者らはTN-Cを塗布した培養皿を作成した後に、その上に培養歯髄細胞を播種し、動態を解析した。その結果、TN-Cは効率的に象牙芽細胞様細胞の分化へ誘導できる環境を与える細胞外基質であることを示した。本研究の目的は歯髄覆罩材としてTN-Cをコートしたcollagen spongeが歯髄幹細胞の動態および硬組織形成細胞への分化、第三象牙質形成にどのような影響を与えるかを分析し、機能性マトリックスとしての有効性を評価することである。 平成25年度の予定は、In vitro実験により、TN-Cをコートさせたcollagen spongeを作製し、その上にラット培養歯髄細胞を播種後の細胞増殖能と骨形成関連蛋白の発現を免疫組織化学染色法、RT-PCR法により検索する。TN-Cをコートさせたcollagen sponge を実験群、非コートcollagen sponge を対照群として比較し検証する。In vivo実験としてはラット臼歯の生活歯髄切断部にTN-Cをコートしたcollagen spongeと非コートcollagen spongeを充填・封鎖後に一定期間経過後、組織標本を作製し、H-E染色および骨形成関連蛋白の発現を免疫組織化学染色法にて分析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
In vitro実験では使用する培養歯髄細胞の細胞数が十分に得られず、そのため免疫組織化学染色法を中心した実験となり遺伝子の検索の進行に遅れが生じてしまった。D系雄性ラットの切歯より歯髄組織を採取し5~7継代し培養歯髄細胞を得た。Recombinant human TN-Cを10μg/mlの濃度に調整した溶液を培養皿に塗布した後2時間37℃でインキュベートした。その後、PBSで2回洗浄後、冷蔵庫(4℃)で自然乾燥させた。この培養皿に細胞を播種し24時間後にホルマリンにて固定した後に免疫組織化学染色法にて細胞の硬組織関連タンパク発現を観察した。実験群としてTN-Cをコートした培養皿の培養歯髄細胞は対照群とした非コート培養皿の細胞と比較して硬組織関連タンパクであるAlkaline phosphataseとOsteocalcinの強い陽性を示した。次に機能性マトリックスを作製するためcollagen sponge (Atelo Cell)を96well中に静置した後にTN-Cを10μg/mlの濃度に調整した溶液を100μl添加した2時間37℃でインキュベートした後、PBSにて洗浄し冷蔵庫(4℃)で自然乾燥させてTN-Cをコートしたcollagen spongeを作製した。Collagen sponge上に培養歯髄細胞数を2.5 × 104 cells/mlの密度で播種し3、7日後にホルマリン液にて固定した。その後、パラフィン浸透し、ブロックを作成後、薄切し標本を作製した。現在、HE染色法および免疫組織化学染色法にて検索中である。 In vivo実験としてはSD系雄性ラットの上顎第一臼歯の咬合面にラウンドバーを用いて低速回転で窩洞を形成した後、μCTを用いて窩洞の直径と深度を確認しており生活歯髄切断したラットモデルを作製している。
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今後の研究の推進方策 |
In vitro実験ではTN-Cコートしたcollagen sponge上の細胞を検索するにあたりパラフィン切片から得られた標本を用いた免疫組織化学染色法だけではなく免疫蛍光染色法により共晶点レーザー顕微鏡による観察も行う予定である。細胞数を充分に得たため、これと並行する形でcollagen sponge上の細胞からmRNAを抽出しcDNAに変換しRT-PCR法にて遺伝子発現を調べる予定である。In vivo実験では生活歯髄切断したラットモデルが確立してきたため、実験群としてTN-Cをコートしたcollagen sponge、対照群として非コートcollagen spongeを充填して、封鎖し、術後ラットを3、5、7、14、21日後に屠殺後、上顎第一臼歯を含んだ上顎骨を摘出し、ホルマリンにて固定した後、脱灰処理する。標本作製は通法に従い、採取したサンプルをパラフィン浸透し、ブロックとし、その後薄切して標本を作製していく。免疫組織化学染色法では、一次抗体として、細胞外基質の指標として(抗TN-C抗体)、歯髄幹細胞のマーカーとして(抗Stro-1抗体、抗CD44抗体、抗Notch1抗体)、象牙芽細胞の指標として(抗Nestin抗体)、硬組織形成能の指標として(抗Alkaline phosphsatase抗体、抗Osteocalcin抗体、抗Osteopontin抗体)を施行する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験補助およびデータ分析として使用する予定であった謝金の支出が予定より少なくなり、次年度使用額が生じた。 物品としてcollagen spongeや頻度の多い試薬(α-MEM、PBS)の購入を予定している。
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