研究課題/領域番号 |
25861813
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
辻本 暁正 日本大学, 歯学部, 助教 (10608409)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 歯質接着性 / 表面自由エネルギー / シングルステップアドヒーシブ |
研究概要 |
界面科学的な歯質接着システムの化学的接着機構の解明の一環として,シングルステップアドヒーシブの接着強さおよび歯質に対するアドヒーシブ処理面の表面自由エネルギーを指標として検討を行った。その結果,シングルステップアドヒーシブの初期接着強さおよび接着耐久性は,製品のおよび含有される機能性モノマーの違いにより異なった。シングルステップアドヒーシブの接着の獲得には機能性モノマーの存在が重要であり,これがコラーゲン線維およびハイドロキシアパタイトと化学的に反応することによって,耐久性に優れた接着界面を形成すると考えられている。また,機能性モノマーと歯質との化学的反応性は,機能性モノマーの種類によって異なることが知られている。そのため,シングルステップアドヒーシブに含有される機能性モノマーの歯質に対する化学的接着能を,アドヒーシブ処理面の表面自由エネルギーを指標として検討した。その結果,シングルステップアドヒーシブ処理面の表面自由エネルギーは,未処理面と比較して低い値を示し,製品の違いにより異なる値を示した。シングルステップアドヒーシブの機能性モノマーは,歯質表層の水酸基と化学的に結合し,疎水性の塩を形成するとされている。このことから,シングルステップアドヒーシブ処理面においては,歯質表層に機能性モノマーによる化学的接着系が形成されたことにより,表面自由エネルギーが低下し,その値はその化学的結合の強さの違いに影響を受けた可能性が考えられた。このように,シングルステップアドヒーシブの接着性は,歯質と機能性モノマーとの化学的相互作用に影響を受けることが判明した。また,シングルステップアドヒーシブの歯質との化学的接着機構について,界面科学的手法である表面自由エネルギーを指標とした検討も重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度の研究計画であるシングルステップアドヒーシブの歯質との化学的接着機構を表面自由エネルギーを指標として検討し,機能性モノマーの有する歯質に対する化学的接着能の違いについて十分な結果が得られている。また,シングルステップアドヒーシブの歯質接着性について界面科学的手法を用いた検討と,従来から用いられている接着強さ試験との相関性も判明しており,これらの検討による歯質接着機構の評価の重要性も明らかとなった。当初予定していた実験が予想より順調に遂行されており,これらの検討とともに,口腔内環境において接着界面に加わる疲労ストレスを想定した動的荷重破壊試験を行うことで,シングルステップアドヒーシブの接着耐久性についても検討し、結果が得られているため、当初の計画以上に研究は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に実施した研究結果に基づいて,シングルステップアドヒーシブとコンポジットレジンとの化学的接着機構について表面自由エネルギーを指標として界面科学的な観点から検討を行う。すなわち,アドヒーシブ表層の低重合層がシングルステップアドヒーシブの歯質接着性におよぼす影響について検討し,アドヒーシブとコンポジットレジンとの界面における化学的接着機構について,検討を加える。これらの検討と,平成25年度の研究結果を合わせて検討し,シングルステップアドヒーシブの接着界面を構成する各部材間の化学的相互作用について考察する。これらの検討から歯質接着システムの化学的接着機構について界面科学的な観点から新たな知見を加える。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品の調達方法の工夫などにより、当初計画より経費の節約ができたため。 平成26年度に使用予定であった消耗品費に追加して,接着試験および表面自由エネルギー測定の実施による消耗品費(ウシ歯)として使用する。すなわち,シングルステップアドヒーシブとコンポジットレジンとの界面における化学的接着機構を解明する研究のデータ収集のため,接着強さ試験および表面自由エネルギー測定に使用するウシ歯の試料数の増加に使用する。
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