研究課題
我々は、低濃度過酸化水素に可視光を照射することで高効率にヒドロキシルラジカルを発生させ、ヒドロキシルラジカルが有する強力な殺菌力を口腔内感染症に応用するという全く新しい殺菌技術の開発を行ってきた。本研究の目的は、生体安全性を詳細に検討し、新しい過酸化水素光分解殺菌技術が歯科臨床応用されるための基礎的な検討を行うことを目的とする。これまでの研究では、ラットの口腔粘膜への直接的影響および全層皮膚欠損創を用いて細胞に対する影響を検証する in vivo 試験を行い、本技術の生体安全性を確認している。また、可視光の他に400 nm 未満の光源で高いヒドロキシルラジカル生成量が認められた。平成26年度は、これまでの試験の結果を踏まえ、光の波長および過酸化水素濃度を変化させた場合の相互作用がヒドロキシルラジカル生成反応と殺菌活性に及ぼす影響について詳細に検証した。光源の波長は365、385、400、465 nm 、過酸化水素濃度は0、250、500、1000 mM で試験を行った。光の波長が短い程、また過酸化水素濃度が高い程ヒドロキシルラジカルの生成量が増加し、殺菌活性も光の波長および過酸化水素濃度に依存した結果が認められた。以上の結果から、光の波長と過酸化水素濃度の組み合わせにより殺菌効果が増強できることが示唆された。特に400 nm 未満の光を光源とすれば殺菌時間の短縮・過酸化水素濃度の低減が可能となり医療器具や食品の洗浄といった多岐にわたる分野への応用が期待できる。400 nm 未満は紫外線領域であるため、今後更なる生体安全性の検証を行い歯科医療分野のみならず様々な分野への応用に向け研究を進める。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Journal of Bioscience and Bioengineering
巻: 119 ページ: 358-62
10.1016/j.jbiosc.2014.08.015