研究課題/領域番号 |
25861823
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福島 庄一 東北大学, 歯学研究科(研究院), 大学院非常勤講師 (30625124)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | CADCAM / 生体材料 / 義歯 |
研究概要 |
近年の歯科用CAD/CAMシステムの発展が目覚ましい状況を鑑みると,現在の義歯作製方法に変わり,CAD/CAMによる次世代義歯作製方法が一般的になるのは必至と考えられるが,現存するPMMA系の床用材料や印象システムなどの関連器材で,全てを対応するのは困難である。そこで本研究の目的は,CAD/CAMでの義歯作製に最適な1)義歯床用材料,2)印象採得システム,3)接着システムなどの新たな関連器材を開発し,患者,歯科医師,歯科技工士,いずれのQOL向上にも貢献しうる,CAD/CAMによる次世代義歯作製方法を確立するものである 今年度は,本法により作製した総義歯の床内面と顎堤粘膜面との適合性について検討し,ワックスレジン重合後に変形をおこさないデンチャーベースの形態について検討した. シリコーン印象体の粘膜面スキャニングデータと,削りだされたデンチャーベースの粘膜面スキャニングデータの誤差はほとんど認められなかった.しかし,ワックスレジン重合後の粘膜面スキャニングデータと粘膜面スキャニングデータとの誤差は,上顎口蓋部において最大200 μm観察された.これはCAD/CAMによりシリコーン印象体と誤差の無いデンチャーベースの削りだしは可能であったが,今回,口蓋部のデンチャーベースの厚みを1.0 mm程度と設定したため,上部レジンの重合収縮によりデンチャーベースの変形を引き起こしたためと考えられた.一方,デンチャーベースに厚みのある下顎は変形が抑制されたため,デンチャーベースの形態をコントロールすることで重合後の変形を抑制できることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AD/CAM技術は,その高精密性,高作業効率,製品の均質性など多くの利点を有することから,歯科分野においても,応用範囲が拡大している.一方,現在の総義歯治療においてはレジンの重合収縮は不可避であり,その結果,如何に精密な印象を採得したとしても義歯床内面と顎堤粘膜との適合性には問題が残されている.またレジン重合による内部気泡等の存在や填入から重合という過程を経るレジンの物性は,義歯床の易汚染性に繋がっている.CAD/CAM技術により,緊密に重合されたレジンブロックを加工することにより,これらの問題は解決できる.しかしながら,人工歯排列や歯肉形成など工程では,患者個々の個性や審美性の表現など,人間の感性が求められる作業が必要とされることも事実である.本法は,機械の精度と人間の感性をそれぞれ最大限に活かした,従来とは全く異なった発想での義歯製作方法であり,機能性・審美性の両面で,生体との高い親和性を持つ新たな総義歯製作法として提案することが可能となったため.
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今後の研究の推進方策 |
1. 義歯床用材料:材料組成の検討として各種樹脂材料を選定し,3点曲げ試験等のJIS T 6501(義歯床用アクリル系レジン)に準じた基本的な物理的特性の評価や,口腔内をシミュレーションしたサーマルサイクルテストを行い,床用材料としての有用性を確認する。 2. 印象採得システム:トレーの形状や材質について試作を行いながら検討を実施する。ゴシックアーチトレーサーに関しても同時並行して試作を行いながら検討を行い,相互の有用性を確認しながら開発を進める。 3. 接着システム:義歯床用材料の検討に伴い,接着材配合の検討を実施する。人工歯や義歯用材料とのせん断接着試験を実施する。サーマルサイクルテスト後のSEM観察による接着界面評価を実施し,接着メカニズムに関する解析も実施していく。 上記の実験結果をフィードバックしながら再評価,見直しを行い,CAD/CAMに最適な関連材料を決定する。当初計画通りに進まない場合に関しては,PMMA系のブロックで評価することも視野に入れ検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の計画目標である,本法により作製した総義歯の床内面と顎堤粘膜面との適合性について検討し,ワックスレジン重合後に変形をおこさないデンチャーベースの形態について検討することが達成されたため 次年度計画である、義歯床用材料、印象システム、接着システムの検討のために、材料やテスト費に充てていく。
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