研究課題
義歯床用材料として広く用いられる歯科用アクリルレジンは、歯科用樹脂の中で優れた耐候性を持つが、義歯の長期使用により、材料表面の粗造化や物性の低下など材料そのものに経年的劣化が起こる。そのため、義歯そのものが、義歯使用者や免疫機能低下者の口臭や日和見感染症、誤嚥性肺炎などの重篤な呼吸器感染症を発症する病原性因子になる。また、長期間使用した義歯は、咬合力や義歯洗浄剤などの物理的、化学的ストレスにより、材料表面の粗造化や微小なポア、クラックなど微生物が侵入可能な大きさの劣化が生じる。しかし、これらの劣化について発生機序や評価方法などは不明な点が多い。そこで、細菌による材料の劣化評価にあたり、各種義歯床用材料として用いられるアクリルレジンについて製作方法の異なる試料を3種類製作した。研磨面および粘膜面を想定したアクリルレジン試料と同型のアクリルレジンの試料をCAM加工機を用いて製作した。これらの3種類の試料において、唾液処理後の表面粗さ、水接触角の測定、Strepotococcus mutansの付着菌量を蛍光色素を用いて定量した。唾液処理後の表面粗さおよび表面ぬれ性についてはほとんど変化がなかった。CAMアクリルレジンは加工機での削り出しのままの試料で、その表面粗さは、粘膜面想定のアクリルレジンと同程度であったが、その表面性状は無気泡でありかつ、研磨面想定のアクリルレジンと同等に均質な性状を示した。
3: やや遅れている
試料に用いたアクリルレジンを洗浄した上で実験を進めていたが、極めて微量な細菌付着となるため、外注しさらに均質のとれた試料製作を行うこととした。また、CAM加工機を用いた試料製作についても検討をすることとしているが、試料製作しては適切なミリングバーのピッチ幅の検討が必要となるため、当初の研究計画よりやや遅れている。
均質のとれた試料製作を行うことを検討している。CAM加工機を用いた試料製作については、同一試料で3段階程度のミリングピッチ幅を設けることで同一の培養液による細菌付着性の試験を行い、微量の付着量の違いについて調査する。また、それらの弾性率などの機械的特性や表面性状についても併せて検討を行う。
研究を進めるうちに、細菌付着試験を行う前の試験片の製作を見直しており、高価な試薬等を用いる実験を見送りしているため、次年度の使用額が生じた。
CAMミリング加工機にて材料による試料での実験を進めており、これらの追加試料の製作費として充てる予定である。
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Interface Oral Health Science 2014: Innovative Research on Biosis-Abiosis Intelligent Interface, Springer, Tokyo
巻: 1 ページ: 45-50