研究課題
顎口腔系に破壊的な作用をもたらす睡眠時ブラキシズムは、補綴歯科領域においては治療予後を左右する重要なリスクファクターであるが、その原因についてはいまだ詳細に解明されていない。本研究は、多因子疾患とされる睡眠時ブラキシズムの遺伝子多型とDNA修飾との関連を明らかにすることを目的とした。本研究では、臨床診断と終夜ポリグラフ検査に基づいて診断を行った睡眠時ブラキシズム患者とコントロールとなる健康成人からサンプルを採取した。末梢静脈血からゲノムDNAを抽出し、中枢神経系に関わる遺伝子多型の解析を行った。その結果、セロトニン2A受容体遺伝子の、プロモーター領域に存在するSNPであるrs6311 (-1438A/G)の遺伝子型に有意差を認めた。プロモーター領域に存在する変異は、その遺伝子の発現量に影響を与える可能性があることから、その発現の変化をみるために、睡眠時ブラキシズムモデルとなる疾患由来のセロトニン2A受容体発現神経細胞を作成した。また、後天的なDNA修飾と睡眠時ブラキシズムの発症との関連を検討するために、マウスに対し、中枢神経系に影響を与える薬剤を投与して睡眠時ブラキシズム誘発モデルを作成した。薬剤は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を用いて、慢性投与を行った。睡眠時ブラキシズム誘発モデルマウスの筋活動を、マウスの明期と暗期を考慮して、睡眠段階とともに解析を行った。それによって、セロトニン神経系の機能として、顎運動そのものの発生を増加させるのではなく、顎運動を誘発する閾値に影響を与えている可能性が示唆された。
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日本補綴歯科学会誌
巻: 8 ページ: 153-158