研究課題/領域番号 |
25861837
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
三上 絵美 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (20419328)
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研究期間 (年度) |
2014-02-01 – 2017-03-31
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キーワード | 抜歯窩治癒 / 歯槽骨生検 / マイクロCT / 歯槽骨リモデリング / 骨形態計測 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、抜歯後の治癒過程で抜歯窩歯槽骨の骨梁が経時的にどのように改変されるのかを明らかにし、将来的には歯科インプラント植立時期の指標を提示することである。新潟大学医歯学総合病院歯科に通院中の方で、本研究に同意を得られた方より、歯科インプラント移植あるいは歯の移植手術の窩洞形成時に破棄される歯槽骨を生検試料として採取した。また、骨代謝状態を検索するために血液検査を行い骨代謝マーカー値を確認した。本年度は、サンプル数を増やし(累計被験者数36名)、採取した歯槽骨を高解像度X線マイクロCT装置を用いて撮影し、海綿骨の微細骨梁構造を観察した。さらに、3次元骨形態計測ソフトウェアを用いて、骨梁(%)、骨表面積(1/mm)、骨梁幅(μm)、骨梁数(1/mm)、骨梁間隙(μm)、骨梁中心距離(μm)、骨パターン因子(1/mm)、構造モデル指数、骨梁結節数(1/mm)、骨梁終末端数(1/mm)を計測し、骨塩量計測も行った。 その結果、抜歯後早期の抜歯窩は、細い網状の骨梁が形成されており骨塩量も低く、抜歯から1年以上経過した試料では、骨梁は厚く骨塩量は抜歯窩周囲の既存の骨に近い値を示した。各計測項目のデータは、抜歯後の時間経過に伴って増減し、一定の期間を経たところで増減がほとんど認められなくなる傾向を示したため、その時期を特定するために折れ線回帰分析を行った。 折れ線回帰分析の結果、骨梁終末端数では抜歯後7か月、骨表面積、骨梁結節数では抜歯後8か月、骨梁幅では抜歯後10か月、骨塩量では抜歯後11か月、骨梁数、骨梁中心距離では抜歯後12か月、構造モデル指数では抜歯後48か月に、それぞれ有意な折曲点が検出された。今後は、組織学的解析を行い、さらに詳しく抜歯窩歯槽骨の治癒過程について検索する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調にサンプル数を増やすことができた。マイクロCTによる撮影や骨形態計測も遅滞なく遂行することができ、統計学的解析手法も定まり、概ね予定通り進展している。微細骨梁構造の抜歯後の時間経過に伴う変化については、当初予想していた結果が示され、概ね計画していた通りに研究が進められた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのデータ分析や統計分析の結果を裏付けるために、組織学的な検索所見を加えていく。抜歯後の抜歯窩歯槽骨の骨梁がどのような時間経過で改変され、いつまで抜歯の影響が残っているのか、その抜歯の影響が認められなくなる時期について組織学的にも検索することで、統計学的な結果が組織学的にも矛盾しない結果となっているか検証する。そして、歯槽骨の微細構造変化に影響を与えている全身的骨代謝因子の解明に向け研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
育児休業から復帰して2年目となり、昨年度に比べ子どもの体調も安定してきたため、予定していた学会への参加は比較的予定通り行くことができるようになってきたが、当初予定していた他大学の先生との研究打ち合わせに行くことがなかなかできなかった。少なくとも1泊2日で行かなければならないため、仕事のある夫に子どもを預けなければならず、夫の仕事や、打ち合わせ先の先生の予定を合わせることも難しかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、組織学的検索を行うため、組織所見のディスカッションを行うためにも、研究打ち合わせ用の旅費として使用する。また、論文にまとめる費用や論文投稿費用など成果発表のために使用する。
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