本研究は臼歯抜歯モデル,咬合回復モデル,咬合挙上モデルに無処置の対照群を合わせた4群を作成し,パッシブアボイダンステストを用いた行動学的評価,実験開始時・終了時の血中corticosterone濃度の計測による酸化ストレス評価,そして,海馬脳スライス切片のNissl染色による病理学的評価を行い,咬合不調和に起因する酸化ストレスが,空間認知能に及ぼす影響ならびに中枢神経系に与える影響について明らかにすることを目的としている。 初年度である本年は実験環境の構築と迷路実験に費やされた。 20匹のWistar系雄性ラットを用い,上顎臼歯抜歯手術を施行する臼歯抜歯群,上顎臼歯抜歯後に実験用義歯を装着する義歯装着群,歯用コンポジットレジンにより咬合挙上を行った咬合挙上群,対照群の4群(各5匹)に無作為に振り分けた。臼歯抜歯群及び義歯装着群ラットの計10匹に対しては,7週齢時に深麻酔下にて全ての上顎臼歯抜歯を施術し,そのうち5匹は臼歯抜歯群とし,残りの5匹は臼歯抜歯後に咬合支持の回復のために実験用義歯を装着した義歯装着群とした。咬合挙上群5匹には11週齢時に上顎6臼歯に対して歯科用コンポジットレジンを用いて0.5mmの咬合挙上を行った。残りの5匹は無処置の対照群とした。 実験開始の7週齢時と迷路実験終了時にラットのストレス値を計測することを目的として,4群のラットの尾から実験終了時まで採血を行った。得られた血液は遠心分離して血漿を採取し,直ちに-80℃にて保存した。 抜歯11週後に各群にパッシブアボイダンステストを用いて学習を行わせた。電気刺激から24時間後にテストゲージの暗室に動物を入れ自発的に暗室に入るまでの時間を計測する。さらに24時間ごとに1週間の迷路実験を行い終了とした。その後,深麻酔下にてラット脳組織切片を作成した。
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