研究概要 |
近年,インプラント治療を希望する患者が,その予後に関連する全身疾患を有する事は少なくなく,その一つに年々増加の一途をたどる糖尿病があげられる. 糖尿病罹患患者に対するインプラント治療の適否は,血糖コントロール状態により判断されることが少なくないが,2型糖尿病は,骨芽細胞機能の障害やそれに伴う低回転型の骨代謝により,歯槽骨へのインプラントの結合に負の影響を及ぼす事も報告されており,抗糖尿病薬による血糖値コントロールが,インプラントの骨結合を改善するのに十分かどうかは不明である. 本研究では,2型糖尿病の病態モデル動物を用い,骨ーインプラント結合について生体力学的・組織形態計測学的分析として,除去トルク値の測定・骨接触率(BIC)・骨代謝状態(動的パラメータ)の測定を行い,糖尿病の影響と抗糖尿病薬の効果について評価を行うことにより,糖尿病患者におけるインプラント治療のガイドラインに寄与することを目的とする. これまでの実験用インプラント埋入期間3・9週の結果からは,Vogliboseによる血糖のコントロールを行っても,2型糖尿病における骨―インプラント結合への負の影響を十分に改善する事は難しいことが示唆されており,糖尿病群と治療群では,対照群よりもインプラント周囲の骨新生が遅れることにより,機械的骨結合の増加も遅れて進行する可能性が示唆されている. これらの結果から,糖尿病群と治療群の遅れて進行する骨新生や機械的結合の増加が,時間とともに対照群と同程度まで回復するのか,あるいは低下したままであるのかについては,さらに長期的な観察研究が必要と考え,現在12週の観察期間において埋入を行っている.
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