今年度は、若年者を対象に、顎位の違いが嚥下圧に与える影響について検討した。咬頭嵌合位に比べ、下顎前方位では、最大嚥下圧の増加を認めた。また、下顎前方位では、咽頭が拡大することから、最大嚥下圧を増加させるためには、通常の容積の咽頭で行うよりもより強い筋の収縮および円滑な連動性のある収縮が必要と考えられる。これらより、義歯非装着の状態では、装着時に比べ下顎前方位になることから、咀嚼を必要としない形態の食物を摂取するときでも、義歯装着が推奨される可能性が示唆された。また、嚥下圧の発生には、舌と口蓋の接触も大きくかかわることから、一部症例でも顎位と舌圧および咽頭残留を含めた嚥下との関連についても検討を行った。これらより、適切な顎位により適切な咽頭形態を保つことは、円滑な嚥下に大きく関連していることが示唆された。
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