研究課題/領域番号 |
25861864
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
長沢 悠子 明海大学, 歯学部, 講師 (90526451)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 歯科用セメント / 高分子材料 / 機械的性質 / 仮着用セメント |
研究概要 |
本研究は補綴装置およびプロビジョナルレストレーションの仮着に使用するレジンセメントの材料学的研究を行うことを目的とする. 試作レジンセメントの作製は,ベースレジンにBis-GMAおよびUDMAを使用した.ベースレジンの稠度の調整のため,Bis-GMAおよびUDMAにTEGDMAをそれぞれモル比1:1および1:2で調整した.重合開始剤にはBPOと第3級アミンを添加した.フィラーにはPEMAを使用した.この粉末と液を粉液比(P/L)0.5,1.0および1.5の3種類で練和を行い,硬化時間,被膜厚さおよび打抜きせん断強さ(1時間,24時間,7日および28日後)の測定を行った.コントロールとして市販レジン系仮着用セメントを使用した. その結果,試作セメントはレジンモノマーの配合,粉液比により硬化時間が65秒から100秒となり,レジンの硬化体が得られることが明らかとなった.各モノマー配合比において,P/L0.5は1.0よりも硬化時間が有意に長くなった(p<0.05).ベースレジンの影響ではBis-GMA(65~89秒)が,UDMA(80~100秒)よりも硬化時間が短くなった.試作セメントは各モノマー配合比において市販セメントよりも硬化時間が有意に短くなった(p<0.05). 被膜厚さはP/L0.5で67μm,P/L1.5では350μmであった.ベースレジンの影響ではBis-GMA(67~295μm)が,UDMA(80~350μm)よりも被膜厚さが小さくなった.試作セメントの被膜厚さは市販セメントよりも有意に大きく(p<0.05),また,P/L0.5,1.0,1.5の順に有意に被膜厚さが大きくなった(p<0.05). 試作セメントの1時間,24時間,7日,28日後のせん断強さは29MPaから45MPaであり,市販セメント15~17MPaよりも大きい値であった(p<0.05).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
補綴装置およびプロビジョナルレストレーションの仮着は長期間にわたることが多い.そのため,仮着用のレジンセメントを開発することにした.この目的を遂行するためにベースモノマー,フィラーの組合せにより硬化体が得られるか,または得られた硬化体が仮着用セメントとしての所要性質を満たすことができるかを確認することをまず研究の第一段階とした.レジンモノマーを配合・調整した結果,セメント硬化体が得られることが確認できた.また,この硬化体の硬化時間,被膜厚さならびに打ち抜きせん断強さを評価したところ,一部,改良の余地はあるものの仮着用セメントとして使用できる範囲にあった.従って,現在までの達成度としてはおおむね順調と考えている.
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今後の研究の推進方策 |
現時点でセメント硬化体が得られ,仮着用セメントとしての性質が得られているものの,問題点としては被膜厚さがやや大きいことが懸念されている.そこで,今後は被膜厚さをより小さくするために,ベースモノマーの配合を現時点よりさらに詳細に検討していく予定である.具体的には低粘性モノマーの添加量の調整などを考慮し,問題点の改善を図る. また,得られた硬化体の機械的性質の再検討,さらに保持力の測定など行っていく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
モノマーの配合,調整,硬化体を得るために時間を費やしたため. 得られたセメントの評価の1つとして保持力の測定を行う.インプラント上部構造物とアバットメント間はセメント固定が用いられることがある.従って,チタン製のアバットメントと金銀パラジウム合金の上部構造物を想定して保持力の測定を行う.保持力の測定は繰り返し荷重を加えた後あるいはサーマルサイクル試験(加速劣化試験)を行った後に測定することにする.
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