研究課題/領域番号 |
25861874
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
吉岡 文 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (50468998)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | エピテーゼ / 内部彩色 |
研究概要 |
顔面領域に生じた欠損に対し,複雑な顔面形態の回復,患者の社会復帰のためには,エピテーゼによる治療は有用な選択肢の一つである.エピテーゼの製作に際し,皮膚色の再現は最も重要な事項のひとつである.われわれはこれまでにエピテーゼの製作に際し,CAD/CAM法を応用した新しいエピテーゼの製作法を確立し,その臨床応用を行ってきた.さらに本研究においては,エピテーゼの彩色を簡便かつ客観的に行う方法を確立することを目的とし,これを臨床応用することにより,より多くの顔面欠損患者に審美性に優れたエピテーゼを提供することができ、顔面欠損患者の社会復帰とQOLの向上につながると考えられる. i. 実験の趣旨を説明し,同意の得られた被験者30名の頬部および前額部の皮膚色を分光測色計(CM-2500d,コニカミノルタ社)を用いて測色し,肌解析ソフトウェア(CM-SA,コニカミノルタ社)を用いて,顔面皮膚色の分析に必要な色価,明度,彩度,メラニン指数,ヘモグロビン指数の算出を行った.なお,メラニン沈着部位や赤みのある部位など,極端に色調の異なる部位は避けて計測を行った. ii. シリコーンサンプル製作用の鋳型を製作するためにφ50mm,中央部での厚径5mm,3mm,辺縁部での厚径0.5mmのワックスパタンを製作し,これを埋没用石膏を用いて埋没し鋳型を製作した.エピテーゼ用シリコーンは,半透明色であり,厚みによって透過度が異なり,色調も異なるため,3種類の厚みを設定したサンプルを製作した. iii. エピテーゼ用に用いられている医療用シリコーンと内部彩色用色素を混合し,シリコーンサンプルを製作した.エピテーゼの内部彩色には,液状の顔料を混ぜ込むものと,フロッキングと呼ばれる,色つきのナイロン繊維を混ぜ込んで色調を与える方法の2種類があるため,サンプルは2通りの内部彩色法により製作した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人間の皮膚色を分析し,その色調を人工材料であるシリコーンで再現するにあたり,ベースとして必要な色調のほかに,メラニン色,ヘモグロビン色も必要である.そこで,被験者30名の皮膚色を分光測色計にて計測し,そのベース成分,メラニン成分,ヘモグロビン成分に分類する.その結果からシリコーンを用いて被験者ごとの肌色サンプルを作製して再び計測し,カラーサンプルの色調を主観的,客観的に評価し,エピテーゼの彩色を客観的に行う方法を完成させることが研究の最終目的である.本研究の第1段階として平成25年度では人間の皮膚色の分析を行った.色の分析ではL*a*b*表色系やL*C*h表色系,XYZ表色系が一般的であるが,色空間での立体イメージで評価するため,確固たるパラメータとして比較評価するのが困難である.そこで,皮膚色の測定に特化した,メラニンインデックス,ヘモグロビンインデックスを用いて皮膚色を数値化することができた.またシリコーンサンプルの鋳型を作製し医療用シリコーンと内部彩色用色素を混色しシリコーンサンプルを製作する段階では当初の計画通りの実験を遂行することができた.医療用シリコーンはメーカーによりその透明度が異なり,透明度がエピテーゼの皮膚色に影響を及ぼす可能性を考慮し,2種類のシリコーン材料でサンプルを作製した.次年度にはシリコーン間の色調の評価も行う予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
各サンプルを分光測色計を用いて厚みの異なる3箇所で各5回ずつ測色を行い,色価,明度,彩度の算出を行う.色彩管理ソフトウェアで色のデータを加減しながら,各被験者の前額部および頬部の色価,明度,彩度に近似した値になるまでソフトウェア上で混色を行う.なおデータの混色には,人間の皮膚構造に従い,ベース層,赤みを帯びた血色層,茶味を帯びたメラニン層の三種のシリコン層を基本構造とする.この三層の基本構造の設計には色価のデータを参照にし,各層の厚みの決定には,明度と彩度のデータを参照して決定し,その混色比率,厚みを色処方として算出する. i. 皮膚色シリコーンサンプル用の鋳型を作製する.作製は実際のエピテーゼを想定し,厚さ7mm,直径30mmの円板状とし,表面は皮膚の表面形状を与える.あらかじめワックスパタンにて規定の形状ならびに皮膚表面形状を付与し,石膏を用いてフラスコに上部,下部に分けて埋没して流蝋し,これを鋳型とする. ii. 決定した色処方に従い,実際に医療用シリコーンを用い,ソフトウェアによって仮想的に算出された内部彩色色素ならびにフロッキングを混色し,皮膚色シリコーンサンプルを各被験者毎に,前額部,頬部それぞれについて作製する.表層から血色層,メラニン層,ベース層となるように填入し,加硫させる. iii. 各皮膚色シリコーンサンプルを主観的,客観的に評価を行う.主観的評価には,本学において,エピテーゼ製作の経験を有する歯科医師ならびに歯科技工士5名とし,皮膚色を非常によく再現している,よく再現している,どちらともいえない,再現しているとはいえない,再現していない,の5段階によるVAS評価とする.また,客観的評価法として,分光測色計を用いて測色し,これを肌解析ソフトウェアを用いて,実際の被験者の肌のデータと比較し,メラニン指数,ヘモグロビン指数,および色差の評価を行う.
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初平成25年度に購入予定であった、解析用パーソナルコンピューターのOSヴァージョンアップを控えていたため、購入を次年度に先送りにした。また解析用のソフトウェアに関してもWindows8対応のものの発売を待つ状況であり、購入を26年度にした。 シリコーンサンプルの測色行い解析を行うが、その際に解析用パーソナルコンピューター(平成26年度購入予定)およびWindows8対応版の色彩管理ソフトウェア(平成26年度購入予定)にて解析を行う。 得られたデータは統計処理ソフトウェアにて統計処理を行う(平成26年度購入予定)。
|