臨床応用を目指した歯や歯槽骨の再生医療には,1)歯原性細胞以外で,2)容易かつ低侵襲に採取でき,3)歯を喪失するような成人からも得られる細胞ソースの検索が重要と考え,我々は,成体になっても体内各所に存在し,一部多分化能を維持する神経堤由来細胞を細胞ソースとして研究に取り組んでいる. 本研究課題は,毛包に存在する神経堤由来細胞を間葉系間葉系細胞ソースとしたスフェロイド培養と,上皮系細胞パターン培養を組み合わせた歯や歯槽骨の再生技術の確立を目的に計画された. 神経堤由来細胞を特異的に標識可能なP0-Cre/CAG-CAT-EGFPマウス毛包から純化した神経堤由来細胞がスフェロイド培養並びに経代による長期培養においても安定して増殖し,神経堤関連遺伝子の発現が認められたことから,培養条件により未分化な状態を維持し増殖可能なことが明らかになった.また,種々の条件で培養することで,毛包から純化した神経堤由来細胞が骨芽細胞,脂肪細胞や神経細胞へと分化誘導可能であることが確認された. 神経堤由来細胞と上皮系細胞との上皮ー間葉相互作用の解析をするためにエナメル芽細胞と神経堤由来細胞の共存培養を行った.7日間培養後の遺伝子発現を解析してたところ,象牙芽細胞遺伝子の発現を認め,免疫蛍光染色ではエナメル芽細胞と神経堤由来細胞の接触部で象牙芽細胞マーカー遺伝子の発現が確認された. また並行して硬組織再生の細胞ソースとして毛包から純化した神経堤由来細胞の有効性を確立するために,in vivoにてマウス頭蓋骨欠損に移植する実験を,足場の検討,移植段階の検討,修復された硬組織の性質といった点から解析している. 本研究結果から,毛包といった成体から低侵襲で採取可能な神経堤由来細胞を細胞ソースとした,象牙質や骨を含む硬組織再生の可能性が示唆された.
|