本研究では歯科生体材料へのペリクル形成における吸着特性を水晶子マイクロバランス法(QCM)によりナノレベルの解析を行った。 初年度は口腔内で多く用いられるチタンおよび高結晶ハイドロキシアパタイトについて、材料の違いがバイオフィルム形成に及ぼす影響を人工口腔装置により検討した。バイオフィルム形成には材料への吸着および粗さなどの表面性状が大きく影響を与えることがわかった。さらにQCMを用い、金、シリカ、チタンと生体タンパク質(ムチン、ラクトフェリン、リゾチーム、βディフェンシン)の吸着メカニズムの解析を行った。QCMを用いたナノレベルの解析により、タンパク質の種類により吸着量が違うことが明らかとなった。 平成26年度は、より詳細な解析を行うために、飽和法を用い、チタン、ステンレススチール、PMMA、ジルコニアに対するラクトフェリンの吸着特性について解析を行った。ラクトフェリンへの最大飽和吸着量はチタンおよびステンレススチールは他の材料より多く吸着することが明らかとなった。また解離定数はジルコニアとPMMAが小さかった。さらに原子間力顕微鏡(AFM)を用い微細形態の観察を行った結果、いずれの材料に対しても均一に吸着している様子が観察された。AFMにおけるタンパク質の吸着形態については、QCMセンサーの表面性状が粗いこともあり、明確に観察することが出来なかった。今後、他の抗菌性生体タンパク質を用い歯科材料への吸着特性について解析を行っていく予定である。
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