研究課題
我々のグループではこれまでに、ヒト歯髄幹細胞は血管新生能、神経再生能ともに優れており、各種神経栄養因子も高発現し、trophic効果が高いことを明らかにしてきた。このことから平成26年度は、アルツハイマー病に対する歯髄幹細胞培養上清 (DPSCs CM) のin vitroにおける有効性を検討した。方法として、ヒト神経芽細胞腫由来株化細胞 (SH-SY5Y) にAβ42ペプチドを作用させ、1) DPSCs CMの添加(+)、2) DPSCs CMの添加(-)の2条件で、BCl-2およびBaxの細胞内発現をウェスタンブロットにより解析した。その結果、DPSCs CM (+)群で、BCl-2の発現上昇とBaxの発現低下がみられた。また、SH-SY5YにAβ42ペプチドを作用させ、DPSCs CM (+)または(-)の条件で、発色法 (MTT法) により細胞生存率を検討した。その結果、DPSCs CM (+)群で、SH-SY5Y生存率低下の抑制がみられた。このことから、DPSCs CMによる神経細胞死の抑制が示唆された。さらに、Katsudaら (Scientific Reports, 2013) により脂肪幹細胞はネプリライシン含有exosomeを分泌することが報告された。ネプリライシンはAβ42の主要な分解酵素であり、生体内に移植した幹細胞が分泌するexosomeによる脳内Aβ42分解促進が期待できる。一方、歯髄幹細胞がネプリライシン含有exosomeを分泌するかは不明のため、DPSCs CMからのexosomeの精製を試みた。DPSCs CM 60 mlを用意し、超遠心分離法によりexosome画分を得た。この画分はexosomeマーカーであるCD81陽性であった。現在は、このexosome画分にAβ42分解活性を有するネプリライシンが含まれるか検討を進めている。
3: やや遅れている
今年度はアルツハイマー病 (Aβ毒性) に対する歯髄幹細胞膜培養上清の有効性を検討するin vitro実験系を確立した。また、歯髄幹細胞培養上清からのexosomeの精製にも成功している。一方、歯髄幹細胞を移植するためのアルツハイマー病モデルマウスの導入・繁殖ができなかったため、in vivo実験には移行できなかった。
これまでの研究により、歯髄幹細胞培養上清による神経細胞への直接的保護効果が示唆され、歯髄幹細胞培養上清からのexosomeの精製にも成功していることから、平成27年度は、歯髄幹細胞由来exosomeによるAβ42分解の検討や、歯髄幹細胞培養上清のグリア細胞に対する効果 (間接的神経保護効果) といった、歯髄幹細胞の抗アルツハイマー病効果についてin vitroでの検討を行うとともに、アルツハイマー病モデルマウスの導入・繁殖を軌道に乗せ、歯髄幹細胞の移植・効果の検討を行なう予定である。
必要物品購入後に端数が生じた。
次年度の試薬資材購入に使用する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) 備考 (2件)
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