申請者はこれまで化学療法誘発口腔粘膜炎におけるRIG-Iの役割について研究を行ってきた。その結果を基に、平成25・26年度の科学研究費の助成を受け、化学療法誘発口腔粘膜炎制御に向けたRIG-Iとがん関連線維芽細胞の機構解明の研究を行った。本研究の目的はがん関連線維芽細胞とRIG-Iの化学療法誘発口腔粘膜炎における役割とその機序を解明し、画期的な新規治療法へと展開する基礎研究を行うことである。平成25年度は歯肉癌細胞と歯肉線維芽細胞を共培養し、がん関連線維芽細胞のモデルを作成、培養した。培養方法としては、Jozefら(Oral Oncology 2011)の方法に従い、共培養ディッシュで1週間共培養を行い、がん関連線維芽細胞モデルを作成した。作成後に細菌感染を模倣してLPS、ウイルス感染を模倣してPolyICを添加した。一定時間培養後、RIG-Iならびにサイトカインの発現を定量PCRで検討した。炎症性サイトカインの発現が軽度認められた。そのため、正常歯肉線維芽細胞とがん関連線維芽細胞モデルの自然免疫応答能の差異について検討する事とした。cDNA microarreyを施行し、比較検討を行った。正常歯肉線維芽細胞と比較し、がん関連線維芽細胞では、COX-2やVEGFなどのmRNAが発現上昇している一方、TLR-3やTLR-4のmRNAは発現低下し、RIG-Iは発現が軽度上昇していた。以上の結果から、がん関連線維芽細胞は自然免疫応答が歯肉線維芽細胞とは異なり、特異的な免疫機序で炎症反応や血管新生に関与していることが推察された。今後、各種口腔癌由来がん関連線維芽細胞での自然免疫応答能を比較検討し、研究を進めていく予定である。
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