研究課題/領域番号 |
25861910
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大泉 丈史 東北大学, 歯学研究科(研究院), 大学院非常勤講師 (40547262)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ビスフォスフォネート / 顎骨壊死 |
研究実績の概要 |
ビスフォスフォネート(以下BP)は骨ハイドロキシアパタイトに強い親和性をもち,骨に選択的に集積し,骨吸収の過程で破骨細胞に取り込まれ,アポトーシスを誘導することにより,骨吸収抑制作用を有す.BPはその強力な骨吸収抑制作用により骨粗鬆症,骨パジェット病,骨形成不全症,乳癌,前立腺癌,腎癌等の骨転移性腫瘍や多発性骨髄腫などの骨吸収亢進性疾患に対し応用されている.BPの化学基本骨格構造はピロリン酸のP-O-P構造をP-C-P構造に置換したものであり,骨ミネラルへの親和性に関連する.また,P-C-P構造の炭素原子の側鎖(R1, R2)に様々な化学的修飾を加えることにより,骨吸収抑制活性に大きく影響する.R2側鎖は骨親和性に関連するのに対し,R1側鎖の化学構造は骨吸収抑制活性の強さに関連する.BPは側鎖にアミノ基を含む窒素含有BP(N-BP)と窒素非含有BP(non-N-BP)の2種類が存在し,N-BPの骨吸収抑制活性はnon-N-BPの1千倍から1万倍である.しかしながら,‘顎骨壊死とそれによる顎骨の露出’という予期せぬ副作用が続発し,数千人の発症が報告されている.顎骨壊死はN-BP投与患者において起こり,骨吸収抑制作用が最強のzoledronateにおいて発症頻度が最も高いが,他のN-BPにおいても発症が報告されている.non-N-BPのetidronateとclodronateにおいて発症例はない.上述の様にBPは骨ハイドロキシアパタイトに強く結合し,反復投与により骨に蓄積するため,現状のまま投与が続けられれば,さらに多くの発症が予想される.この副作用に対する対応および原因解明が急務である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①東北大学病院歯科顎顔面口腔外科を受診し,BP関連顎骨壊死と診断された患者おいて,窒素非含有BP剤である etidronate による置換療法を行った患者と口腔衛生管理や腐骨の積極的等の経過観察を行った群をコントロール群とし統計学的調査を行った.その結果,etidronate 置換療法を行った群では消炎および腐骨分離までの時期がコントロール群と比較し,明らかに短期間であった.N-BPが引き起こした顎骨炎症および壊死をnon-N-BPのetidronateが抑制し,腐骨分離を促進したと考えられた.得られた結果をもとに論文投稿に至った. ②BPによる顎骨壊死モデルマウスの作製は未だ成功には至っていない. ③BPの骨親和性の研究はこれまで報告された内容と比較検討中である.
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今後の研究の推進方策 |
①上記投稿論文のアクセプトを目指す. ②マウスにおけるBP剤の骨親和性および顎骨壊死の関連について調査,研究を進める. ③BPによる顎骨壊死モデルの確立を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初参加予定であった学会への参加をとり辞めたため.
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次年度使用額の使用計画 |
実験用マウス購入費にあてる予定である.
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