頭頸部領域における様々な疾患は、治療後の骨の欠損を伴う事が多くあり、骨欠損へ対する治療法として骨再生療法への期待が高まっている。申請者らは、骨芽細胞分化における生体内微量元素の1つである亜鉛の効果に着目し、研究を行ってきた。本研究では従来より用いられてきた塩化亜鉛および硫酸亜鉛ではなく、亜鉛放出型チタンより溶出された溶出亜鉛液を用いた骨再生療法の開発を目的とした。本年度はコントロールとして塩化亜鉛を用い溶出亜鉛液との比較検討を行った。幹細胞は歯髄幹細胞を用いた。1)細胞増殖:細胞増殖に関しては亜鉛無添加、塩化亜鉛添加、溶出亜鉛添加において有意な差は認めなかった。2)アルカリフォスファターゼ染色:骨芽細胞誘導7日目のサンプルにおいて亜鉛無添加群および塩化亜鉛添加群では同程度の染色性であったが、溶出亜鉛液添加群では著明なアルカリフォスファターゼ染色を認めた。3)リアルタイムPCRによるmRNA発現:培養7日目に骨芽細胞分化における代表的な分化マーカー遺伝子であるtype I collagen、ALP、osteocalcin、Runx2の発現に関して溶出亜鉛添加群で著明な発現上昇が確認された。また、血管内皮細胞増殖因子であるVEGFのmRNA発現においても増強を認めた。4)基質石灰化:培養14日目および28日目にアリザリンレッド染色、von Kossa染色により基質石灰化を確認し、溶出亜鉛添加群で基質石灰化の亢進が確認された。また、以上の結果を元に実験動物の皮下移植を試みた。
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