再生医療において複雑な幹細胞分離法は臨床応用には不向きである。neurosphere培養法は、神経幹細胞および神経堤幹細胞の分離法の1つである。口腔粘膜間質細胞は神経堤由来であり、神経堤幹細胞が存在していることが示唆される。現在までにヒト口腔粘膜間質細胞に同手法を応用し、詳細に分子生物学的に評価した報告はない。そこで、ヒト口腔粘膜由来細胞をneurosphere法により、sphere形成したOral mucosa sphere-forming cells(OMSFCs)を幹細胞生物学的に検討した。OMSFCsは自己複製能を保持して、神経堤関連遺伝子であるnestin、CD44、slug、snailおよびMSX1の発現を認めた。さらにマイクロアレイ解析の結果、単層培養に比較し、神経堤関連遺伝子(EDNRA、Hes1およびSox9) の発現上昇を認め、OMSFCsは神経堤由来細胞が単層培養に比べ多く存在していることが示唆された。さらに興味深いことに、OMSFCsではα2-integrin (CD49b)の発現パターンが異なっており、OMSFCsで上昇していた。OMSFCsは神経堤細胞系統である骨芽細胞、脂肪細胞、軟骨細胞、平滑筋細胞および神経細胞へと分化能力を保持していた。In vivo硬組織再生実験において免疫不全マウスの皮下移植でさえも、骨形成能を保持していることを見出した。本研究より、neurosphere法によって単離されたOMSFCsは神経堤組織および骨再生医療において重要な細胞供給源となる可能性が示唆された。本研究成果は、Stem Cells Transl Medに掲載された。
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