研究課題/領域番号 |
25861915
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
高橋 謙一郎 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (90613604)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 口腔癌 / 頸部リンパ節転移 / SNPsアレイ / 転移時間 |
研究概要 |
口腔癌において後発頸部リンパ節転移の生じるまでの期間は症例により様々であるため経過観察期間や予防的化学療法の長期化、ひいては医療コストの増大の一因となっている。本研究の目的は、一次治療終了後に長期間経過してから生じる頸部リンパ節転移症例を予め予測する因子を解明するため、SNPsアレイを応用して網羅的CNV/LOH 解析を行い、このような症例の癌細胞が比較的早期に転移するものと比べて遺伝学的にどう異なるのか、転移時間の差異が生じるメカニズムを明らかにすることである。 研究初年度である平成25年度は、舌癌症例のうち長期経過後頸部転移症例(実験群)と早期転移症例(対象群)のパラフィン包埋ホルマリン固定標本からDNAを抽出し、新規開発された市販のSNPsアレイを用いて網羅的なCNVの比較調査を行った。 口腔癌を含む固形がんを対象とした網羅的CNV 解析は、すでにアレイCGH を含む様々な手法により行われており、それによる多くの知見も得られている。しかしそれらのうち臨床経過に注目した研究の多くは癌の進展、悪性度に関する予後マーカーあるいは化学療法、放射線療法に対する親和性や抵抗性に着目したものが多く、本研究のようにあえて類似した進展度、転移症例に対して時間経過の違いが生じる原因に注目した研究はほとんど存在しない。症例ごとに経過観察期間や予防的化学療法の必要期間を予想しえる因子に着目した本研究は口腔癌のみならず、すべての癌腫において普遍的テーマとなりえる可能性があるといえる。また、すべての患者に一律の体制が大半である治療後経過観察の現状に対し、本研究の成果を臨床の場で役立てることができれば、患者ごとに経過観察期間や術後化学療法の継続期間を適切に短縮、延長できる可能性があり、今後ますます増大が見込まれる医療コストの適切な運用にも役立つと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請時の実験計画では、①:実験群、対照群の症例の選択、②:FFPE 標本からのDNA 抽出、③:SNPsアレイによるCNV解析と候補因子の抽出までを平成25 年度の達成目標としていたが、本研究に適した新型SNPsアレイ《OncoScan FFPE assay》の調達が遅れたため、実際の進捗状況は、実験群、対照群ともにSNPsアレイによるCNV解析まですすみ、現在候補因子の抽出作業を急いでいる段階である。また、新製品のため受託解析開始が行われていないため実験計画を変更し、上記新型アレイチップの解析は本学生命情報学研究室の実験機材を借用して自ら行うこととした。 実験データの信頼性については当初より再現性の高いデータが得られており、現時点で実験方法の再検討を要するなど、実験計画の進捗に支障を及ぼす問題は生じていない。 また、資材の調達もも現在は予定通り行えており、遅延の復旧は間もなく完了する見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の未達項目を早期に達成し、平成26年度の研究計画である、④:抽出された因子の免疫染色と定量PCR 法による発現量評価と相関関係の検討と、⑤:④で仮定した閾値が別の症例で当てはまるかを評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画では既存のSNPsアレイを用いた受託解析を行う方針だったが、新規市販アレイを購入し研究室内で実験を行うこととしたため、研究費の使用時期に遅延が生じたため。 全体の研究費使用計画と必要経費に変更は生じておらず、計画期間(2年)以内に総額を消化する見込み。
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