研究課題/領域番号 |
25861922
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
冨原 圭 富山大学, 大学病院, 助教 (70404738)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 口腔癌 / 免疫抑制細胞 |
研究概要 |
本研究は、免疫抑制性細胞集団として知られ、担癌状態などで著しく増加することが知られているミエロイド系抑制性細胞(Myeloid derived suppressor cell;以下MDSC)の形質変化を誘導し、口腔扁平上皮癌に対する新たな免疫学的アプローチによる治療法の開発を目的として、シンジェニックのマウス口腔扁平上皮癌モデルを用いて、口腔癌組織におけるMDSCの分布および機能解析と、このMDSCを効果的な抗原提示細胞へと形質変化させる手法の検討を行い、口腔癌に対する新たな免疫ワクチン療法のために応用することが可能かどうか解析を行うものである。その進捗状況は、マウス口腔癌モデルを用いて腫瘍組織内でのMDSCのマーカーであるCD11b、Gr-1陽性細胞が著しく増加していることが確認された。また、この細胞集団以外にCD4、CD25、Foxp3陽性のTreg、CD11b、CD14陽性TAMの出現頻度に関して解析を行ったところ、腫瘍細胞を移植2週間後で、すでに腫瘍組織内では、これらすべての細胞集団が末梢リンパ節内での出現にくらべて著しく増加していることが確認された。そこで、口腔癌担癌マウスにおいて、Tregを含めた抑制性細胞とMDSCの相互作用に着目し、これらの集団の癌組織中での機能解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MDSCをin vivoにおいて選択的に標的する方法について解析を行い、化学療法剤であるゲムシタビンの投与が、口腔癌組織内においてMDSCを選択的に標的としている可能性を見出した。ゲムシタビンのMDSCに対する選択的効果は、すでに他のマウスモデルなどでは報告があり、申請者もマウス口腔癌モデルにおいては、ゲムシタビンの投与により腫瘍組織内でCD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、Tregの割合は変化せずにMDSCとB細胞のみの割合を有意に低下させる効果を確認した。さらに、このゲムシタビン投与のマウスでは、これら免疫抑制性細胞集団の低下に加えて、T細胞免疫応答の増強が確認され、腫瘍組織内へのT細胞の集簇も確認された。これらの結果は、MDSCを含めた免疫抑制性集団の質的、量的変化が抗腫瘍効果を増強する可能性を示唆したものである。
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今後の研究の推進方策 |
形質変化したMDSCを用いた口腔癌マウスモデルを用いた治療実験を行う。これまでの基礎的解析をもとに口腔癌マウスモデルを用いた治療実験を行い成熟型CD11b,Gr-1陽性細胞の抗腫瘍効果を評価する。担癌マウスの腫瘍組織や各種臓器より分離したMDSCをin vitroで形質変化を誘導し、さらにそれらを担癌マウスへ投与する。この投与されたMDSCが抗腫瘍効果を発揮するかどうか解析を行う。これまでに様々な方法が行われているが、その多くで効果が不十分だとされ、その理由として癌組織における免疫抑制性集団の存在が考えられる。本研究は、それらの抑制性集団の性質を効率よく利用することに工夫を施した手法の開発であり、効果的な新規免疫治療法の開発が期待されると思われる。
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