研究実績の概要 |
1.口腔癌マウスを用いたミエロイド系抑制性細胞Myeloid derived suppressor cell(MDSC)とその他の免疫抑制性細胞の相互作用についての解析については、口腔癌細胞株SCCVII担癌マウスを用いた解析で、腫瘍移植後の腫瘍組織内でMDSCが、制御性T細胞 regulatory T cell(Treg)や腫瘍関連マクロファージTumor associated macrophage(TAM)などの抑制性細胞がリンパ節に比べて増加していることが確認された。さらに注目すべき点は、腫瘍組織内に浸潤しているCD4陽性細胞中の50%以上がTregであることが確認された。このTregの著しい出現に比べて、MDSCの増加は数%であったことから、腫瘍移植2週間では、Tregの誘導によりMDSCの出現が抑制されている可能性が示唆された。また、低用量のゲムシタビンを投与したSCCVII担癌マウスでは、樹状細胞と癌細胞が形質変化していることが確認された。さらに以下に示す内容について確認された。1.腫瘍組織内のMDSCを含めたCD11b陽性細胞の細胞表面上では、death receptorであるDR5(TRAIL-R2)やFas(CD95)の発現が増強している。2.腫瘍組織内のTregの細胞表面は、これらのdeath receptor に対するligandであるTRAILやFasLの発現が上昇している。3.中和抗体を用いた解析で、腫瘍細胞から分離しらTregは、Fas/FasLを介してCD11b陽性細胞のアポトーシスを誘導する。4.SCCVII担癌マウスに低用量のゲムシタビンを投与した場合、腫瘍組織内では、樹状細胞上のCD80,CD83,CD86,CD40,MHC-classI,MHC-classIIの発現が増強していた。 5.SCCVII担癌マウスに低用量のゲムシタビンを投与した場合、腫瘍細胞上CD40,CD80,CD86などのT細胞補助的刺激分子やICAM-1,P-selectin,VCAM-1などの免疫細胞の接着等に係る分子群が増強していた。
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今後の研究の推進方策 |
今後検討を予定していることは、1.SCCVII担癌マウスにおいて、Tregの選択的除去(PC61などの抗体を用いた方法や低用量シクロフォスファミドによる)を継続的に行い、経時的にMDSCの出現頻度を確認してTregのin vivoでの排除が、MDSCの増加を誘導するかどうかを検討する。2.上記の結果、Tregの排除で担癌マウスの腫瘍組織内でMDSCが増加が確認されたら、それらを抗原提示細胞様に形質変化させることが可能かどうかを解析するため、SCCVII担癌マウスに低用量のゲムシタビンを投与し、①腫瘍組織内のMDSCの細胞表面抗原CD31,CD71,CD115,CD80,CD86,CD40,CD83,B7-H1,F4/80,MHC-classI,MHC-classII等)の変化をフローサイトメトリーで評価する。②腫瘍組織からMDSCを磁気分離とセルソーターの併用で分離し、iNOS,Arg1,VEGF,MMP9,S100A8,S100A9の発現についてリアルタイムPCRで解析する。3.上記の結果、腫瘍組織内のMDSCの形質変化が確認されたら、それら成熟型CD11b,Gr-1陽性細胞による腫瘍組織内での免疫応答を評価するため、腫瘍組織内のT細胞上の活性化マーカーである4-1BB、CD69、Granzyme Bの発現、またT細胞の細胞内染色によるIFN-gammaの発現をフローサイトメトリーで評価する。
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