癌の浸潤、転移は最も重要な特性であり、癌の浸潤を防ぐことが予後を左右すると思われる。また、癌細胞は上皮間葉移行(EMT:Epithelial-Mesenchymal Transition)獲得にて細胞間接着が失われると、運動能、浸潤能が高まると考えられており、EMT獲得が悪性化の進展につながると考えられる。これまでの研究で、浸潤様式3型、4C型と比較して、悪性化が進む4D型細胞では上皮系の性質であり、接着因子であるE-cadherinは発現抑制され、間葉系の性質を示すものが多く、EMT獲得が示唆された。しかしEMT誘導因子であるSnail、Twistの発現を検討した結果、SnailはE-cadherinの発現と逆相関を示し、関連が示唆されたが、Twistでは関連を認めることができなかった。そこで、EMTについてさらに検討するため、EMTの獲得が示唆されなかった3型OSC-20細胞、4C型OSC-19細胞を用い、TGF-beta処理をおこなうことで、EMTへの誘導を行った。OSC-19細胞では上皮系E-cadherinの発現の減少が認められたが、間葉系の性質であるVimentin、N-cadherinやSnailの発現上昇には至らなかった。しかし、OSC-20細胞ではE-cadherinの減少、VImentin、N-cadherinの上昇が認められ、TGF-beta同様にEMT誘導因子であるSnailも発現の上昇が認められた。これらのことより口腔扁平上皮癌における浸潤様式とEMTに関連があると思われた。
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