研究課題/領域番号 |
25861926
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
萩原 純孝 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (40547551)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | CD109 / 口腔扁平上皮癌 / 血液腫瘍マーカー / TGFbetaシグナル |
研究概要 |
扁平上皮癌で高発現するとされるCD109が、TGFbeta-1シグナル(癌の発生初期においては癌抑制的に作用すると考えられている)を負に制御しかつ、培養細胞の培養上清中に分泌されていることに着目して、分泌型CD109の新規扁平上皮癌マーカーとしての可能性を検討した。 予備実験として、使用予定であるELISAキットが分泌型CD109を適切に同定可能か否か、FLAG標識型CD109高発現細胞の培養上清を用いて検証した。次にFLAG標識型CD109高発現細胞をヌードマウスの背部皮下へ移植し腫瘍モデルを作成、それらのマウスより定期的に採血を行い、血中CD109濃度をELISAキットを用いて測定した。その結果、移植細胞のCD109発現量および生着腫瘍塊のサイズ増大に相関して血中の腫瘍由来CD109(FLAG標識型CD109)濃度が上昇することが確認された。また増殖した腫瘍塊を切除しその後の血中CD109濃度を測定したところ、腫瘍由来CD109濃度は速やかに減少することが確認された。これらの結果より、in vivoにおいても腫瘍から血中に分泌されたCD109はELISA法により同定が可能であり、また新たな血液腫瘍マーカーとなり得る可能性が示唆された。 一方、臨床検体の本研究への使用に関して当院生命倫理審査委員会へ申請し、承認済み研究課題として開始した。当科を受診した口腔癌患者および口腔前癌病変患者から過去に採血検査として提供いただいた血液検体を用いて、マウス実験でも使用した同種のCD109-ELISAキットを使用して血中CD109濃度を測定、臨床像との関連性を検討することを開始した。現在も血液検体の解析を中心にすすめているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CD109高発現細胞移植マウスにおける腫瘍増大と血中CD109濃度においては比較的再現性のある結果が得られた。口腔癌および口腔前癌病変患者から提供いただいた血液検体を使用してCD109濃度を測定するステップまで進んだが、検体数がまだわずかである。
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今後の研究の推進方策 |
血中CD109濃度について、マウスにおける解析結果(血中の腫瘍由来CD109濃度は腫瘍サイズに相関する)に対し、口腔癌患者から提供いただいた血液検体が、①臨床像とどのような関係性を示すか、②同一患者での経過においてどのような挙動を示すか、③腫瘍組織内での発現量(免疫染色等)と血中濃度との関係はどうか、などあらたな検討課題を設けて研究を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
基礎的研究については、既存の研究機器や実験試薬を有効利用することで実験が進められたため研究費の使用がおさえられた。また臨床検体を使用した研究においては、使用する検体の臨床情報解析(データベース作成)に重点がおかれたために研究費未使用額が生じた。 基礎的研究においては、CD109高発現による培養細胞中のTGFbeta関連タンパク質の発現変化を当初の研究計画より拡大して(CD44に特定することなく)解析予定である。また血液検体を使用した臨床研究においては、H25年度中に進める計画であった血中CD109濃度の解析を積極的に進めていく。
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