新規の分子標的薬の開発には目覚ましいものがある。しかし、口腔癌に対する分子標的治療は他領域の悪性腫瘍に比べて開発が遅れており、まだ始まったばかりである。大きな期待が持たれたEGFRをターゲットとした分子標的治療も、従来の治療を大きく凌駕する結果は得られていない。そこで、治療に抵抗して生残り、再発の原因となる癌幹細胞を治療対象とし、新たな分子標的をターゲットとした研究を進めて行くことが重要である。頭頸部癌では2007年に癌幹細胞としての性格を示す細胞群が報告されて、CD44が癌幹細胞マーカーとして知られている。癌幹細胞マーカーとしてCD44を用い、CD44陽性細胞を抽出し、sphere形成ができるところまで確認した。また、研究代表者は、これまで分子標的として発癌プロモーターの細胞内受容体であるプロテインキナーゼC(PKC)に着目し、その阻害剤であるsafingolによる口腔癌細胞のcaspase非依存的アポトーシスを明らかにしてきた。safingolによる細胞死は、抗酸化剤で抑制されることから、活性酸素が関与すること、その過程にendo Gのミトコンドリアから核へのトランスロケーションが関係することが分かった。Endo Gは口腔癌に対する分子標的となると考えられた。
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