これまでにわれわれは、核内受容体が扁平上皮癌の細胞増殖に重要な役割を果たしていることを報告している。すなわち、この核内受容体の機能を抑制する、あるいは発現をノックダウンすることにより、癌細胞の増殖が抑制されることを見出している。我々が注目している核内受容体がPeroxisome proliferator-activated receptor gamma (PPARgamma) である。このPPARgammaは核内転写調節因子として働き、種々の分子の発現を制御している。その分子の一つがFatty acid-binding protein (FABP) であった。FABPの中でも特にFABP4が扁平上皮癌の癌部に特異的に高発現していることを患者から採取した組織切片を用いた解析で明らかになった。さらに培養細胞でも高い発現が認められたことから、このFABP4をsiRNAを用いて特異的にノックダウンすることを試みた。その結果、培養癌細胞の増殖を有意に抑制することができた。これらの結果からFABP4も癌細胞の増殖に重要な役割を果たしていることが明らかになり、これら一連の研究成果を英語学術論文として発表することができた。さらに現在、このPPARgammaによって発現をコントロールされている他の分子についても検討中であり、より詳細な研究を進めていく予定である。
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