本研究は口腔癌に対するDCM-T1WIの薬物動態解析を行い、腫瘍内血管変化との関連性を解明することを目的としている。まず高磁場MR装置、3.0T MAGNETOM Skyraに搭載した「Tissue4D」の撮像sequence調整を行った。DCM-T1WIにおける薬物動態解析は造影前後の信号強度から組織中の造影剤濃度を算出する手法で、具体的には造影前のT1測定(T1map作成)、造影中のDynamic-curve analysisを経て信号強度を造影剤濃度に変換する。T1map作成には2つの異なるFAでT1_vibe3d sequenceで撮像することとした。Dynamic撮像にはvibe sequenceを用いて T1map用画像撮像のプロトコールとデータ数、信号分布が等しくなるようにパラメータを設定し、造影開始後約5分程度、連続撮像を行い、本撮像sequenceを用いてデータ収集をおこなった。具体的にはTofts modelを使用し、プラズマ中の造影剤が毛細血管を通って血管や細胞外腔の間質に漏れ出す移行時間(Ktrans)や、細胞間隙から毛細血管へ戻る移行時間(kep)、血管細胞外腔の容積率(Ve)、造影剤投与直後の腫瘍内造影剤濃度-時間曲線下面積(IAUC)を算出する。これらのパラメータを数値として、またヒストグラムの変化として経時的に診断することで、より精度の高い腫瘍組織内血流動態の把握ができる。扁平上皮癌において頬粘膜癌ではKtrans:0.112、Kep:1.317、Ve:0.102、iAUC:11.442、下顎歯肉癌ではKtrans:0.462、kep:0.869、Ve:0.538、iAUC:71.742と数値が大きく異なり、同じ組織型でも部位によってパラメータが異なることが示され、部位、また分化度との関連性を組織学的および生化学的に検討する予定であった。
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