われわれはこれまでヒト型抗RANKL モノクローナル抗体であるデノスマブにより生じる顎骨壊死の発症率がBP注射剤と同頻度であることから,RANKL を介した破骨細胞の生存・分化誘導機構の障害により顎骨壊死が生じ,BP 製剤がその障害に関与しているという仮説の下,ゾレドロン酸存在下と非存在下で培養したマウス破骨前駆細胞のマイクロアレイ解析による網羅的な遺伝子発現解析を行った.RANKL シグナル関連分子を中心にゾレドロン酸非投与群に比べ,投与群において1/2 以下の発現低下を示す遺伝子を抽出した結果,Nfatc1 とCar2 を同定した.さらにこれらの遺伝子が破骨細胞分化誘導時に著明な発現を示し,ゾレドロン酸による分化阻害に伴い発現が抑制された.またBP のメバロン酸経路におけるファルネシルピロリン酸合成酵素の阻害をバイパスすることにより,ビスフォスフォネートの影響を回避できるゲラニルゲラニオール(GGOH)を投与したところ,いずれの遺伝子も発現回復が認められた(図1).以上の知見から,ゾレドロン酸によるメバロン酸経路阻害が,Nfatc1 とCar2 を抑制することでRANKL 誘導性の破骨細胞分化を阻害している可能性が示唆された.以上の成果は第58 回日本口腔外科学会学術大会(2013 年10 月 福岡)および第2 回日米韓口腔顎顔面外科学会合同学術大会(2014 年9 月 米国 ハワイ州 ホノルル)で発表し大きな反響を得て,2015 年4 月にArchives of Oral Biology 誌に受理され,論文掲載された.
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