研究課題/領域番号 |
25861948
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
原田 豊子 山口大学, 医学部, 特別医学研究員 (20647937)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Warburg効果 / ジクロロ酢酸ナトリウム / α-リポ酸 / メトホルミン / 口腔癌 |
研究概要 |
口腔癌細胞に対するジクロロ酢酸ナトリウム (DCA)、α-リポ酸、メトホルミンのWarburg効果阻害作用の検討を行った。まず口腔癌細胞(HSC2、HSC3、HSC4)に対するDCA、α-リポ酸、メトホルミンの細胞増殖抑制効果をMTT assayにて検索した。それぞれの50%阻害濃度(IC50)は、DCAではHSC2において48h処理では4.5 mg/ml、72h処理では3.0 mg/ml、HSC3においては48h処理では8.5 mg/ml、72h処理では2.5 mg/ml、HSC4においては48h処理では7.5 mg/ml、72h処理では6.0 mg/mlであった。またα-リポ酸ではHSC2において48h処理では6.0 mg/ml、72h処理では5.0 mg/ml、HSC3においては48h処理では2.5 mg/ml、72h処理では1.0 mg/ml、HSC4においては48h処理では4.0 mg/ml、72h処理では4.0 mg/mlであった。さらにメトホルミンではHSC2において48h処理では2.5 mg/ml、72h処理では5.0 mg/ml、HSC3においては48h処理では0.5 mg/ml、72h処理では4.5 mg/ml、HSC4においては48h処理では4.5 mg/ml、72h処理では1.0 mg/mlであった。また5-FU、シスプラチン (CDDP)、ドセタキセル (DOX)のIC50を確認し、HSC2、HSC3、HSC4それぞれにおいてDCA、α-リポ酸、メトホルミンの何れかと5-FU、CDDP、DOXの何れかを組合せて処理したところ、DCA、α-リポ酸あるいはメトホルミンの何れかを先行処理した場合は、細胞増殖抑制効果は有意に低下した。また上記6薬剤のIC50の濃度で48h、HSC2を処理したところ、α-リポ酸が最も強くProcaspase-3とActive formをバンドとして検出でき、AMPKの発現も最も強かった。ヌードマウス背部皮下HSC2腫瘍に対するDCA (10mg/kg)、α-リポ酸 (5mg/kg)、メトホルミン (50mg/kg)それぞれ単剤での治療では、メトホルミンの抗腫瘍効果が最も高かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
口腔癌に対するWarburg効果阻害作用を、細胞増殖抑制効果、Caspase-3を介したアポトーシスの誘導、AMPK発現、ヌードマウス腫瘍に対する抗腫瘍効果で評価したところ、in vitroではα-リポ酸の作用が最も強く、in vivoではメトホルミンの作用が最も強いことが確認でき、さらに既存の抗癌剤である5-FU、CDDP、DOXとの併用療法において、DCA、α-リポ酸、メトホルミンの何れかと組み合わせる場合には、抗癌剤と同時併用か、あるいは抗癌剤を先行させた方が併用効果が高い事も明らかにでき、Warburg効果の阻害作用の検討がおおむね順調に進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Warburg効果阻害作用の検討を、乳酸産生、[18F]-FDGの取り込み、ピルビン酸脱水素酵素活性、HIF-1、PI-3K/Akt/mTOR発現を検索することでさらに詳細な評価を行って行く。また、in vivo ヌードマウス背部皮下腫瘍に対して、DCA (10mg/kg)、α-リポ酸 (5mg/kg)、メトホルミン (50mg/kg)それぞれに、既存の抗癌剤である5-FU、CDDP、DOXを併用することで、さらに効果的な治療方法を検討していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度にin vitroでのDCA、α-リポ酸、メトホルミンの口腔癌に対するWarburg効果阻害作用を解析するために実験補助員の雇用を予定していたところ、順調な成果が見られたことからも、当初の雇用予定期間よりも短い期間となった。また、動物実験の一部を次年度に実施する必要性が生じたことから、次年度使用額が生じた。 次年度は1年間通して実験補助員の雇用を行い、多くの動物実験を行う予定である。特にWarburg効果を効果的に阻害できる治療法を検討し、ヌードマウス背部皮下腫瘍に対してそれらの治療を行い、評価していく予定であり、それらの費用に充てる。
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