(研究目的) 近年、様々な癌腫において治療耐性の原因として癌幹細胞の存在が指摘されており、癌幹細胞を標的とした治療法の確立が必須である。当研究室では、癌幹細胞の制御に転写因子Brachyuryが関与する事を明らかにした。本研究ではBrachyuryが癌幹細胞を標的とした治療に有用な標的分子であり、臨床応用へ発展させるための遺伝子治療の新しいツールとして応用できる可能性を検索する。ことを目的とする。 (研究実施計画) 当研究室ではこれまでに、ヌードマウス移植において極めて造腫瘍性が低く転移をおこさない腺様嚢胞癌細胞株ACCSに緑色蛍光タンパク質 (GFP) 発現ベクターを導入することによって得たACCS GFPを樹立するとともに、ヌードマウスの舌に接種し、形成した腫瘍より分離した細胞を再び舌に接種することを繰り返すin vivo selectionにより100%の造腫瘍性と100%の顎下リンパ節への転移性を示すACCS-M GFPを樹立した。ACCSM-GFPはE-cadherinの減少、Vimentinの増加を特徴とするEMTをしめしていることが親株との比較でしめされている。さらにT-box転写因子であるBrachyuryをノックダウンすると、ACCSM-GFPの癌幹細胞の性質、EMTともに消失することからBrachyuryが癌幹細胞およびEMTに直接的に関与している因子である可能性も示している。 平成26年度の実施計画としてマウス転移モデルにおける局所投与によるBrachyuryノックダウンの可能性の検討と転移・薬剤耐性・放射線耐性に与える影響の検討を前年度と同様、行う事としている。
|