研究課題/領域番号 |
25861964
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
飯田 昌樹 横浜市立大学, 附属病院, 指導診療医 (70613511)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 口腔癌 / ハイパーサーミア / 新規磁性抗癌剤 / ヒト由来扁平上皮癌OSC19細胞 |
研究概要 |
平成25年度における研究では、動物実験及び細胞実験で使用する予定であった家兎由来扁平上皮癌VX2細胞をヒト由来扁平上皮癌OSC19細胞に変更して新規磁性抗癌剤EI236の抗腫瘍効果の検討を行った。細胞を変更した理由としては、細胞実験において様々な種類の口腔癌細胞を検討した結果、OSC19細胞に対して新規磁性抗癌剤EI236がより優れた抗腫瘍効果を発揮すること、家兎よりも安価で使用匹数を確保可能で飼育しやすいヌードマウスBALB-C nu/nuにOSC19細胞が移植可能であるということが挙げられる。 今年度において、細胞実験では新規磁性抗癌剤EI236のヒト由来扁平上皮癌OSC19細胞に対するアポトーシス誘導による細胞障害性の検討及び、ヒト由来扁平上皮癌0SC19細胞に対して新規磁性抗癌剤EI236が及ぼす浸潤能抑制と遊走能低下の検討を行った。 動物実験では、新規磁性抗癌剤EI236がヌードマウス舌癌頸部リンパ節転移モデルに対して局所投与下においても抗腫瘍効果を発揮できることを証明する目的でヒト由来扁平上皮癌OSC19細胞をヌードマウスBALB-c nu/nuの舌に移植して、移植後16日、18日後、20日後、22日後にリンパ節を摘出して、転移の有無、原発部位と転移リンパ節の大きさ、個数、節外浸潤の有無について病理組織学的検討を行った。 本研究は申請者の飯田を中心として、横浜市立大学大学院医学研究科顎顔面口腔機能制御学准教授である光藤から実験方法に関するアドバイスを仰ぎつつ、横浜市立大学大学院医学研究科循環制御医学講座の協力で実験を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの到達度は〈区分〉(3)に相当する。理由を以下に示す。 実験計画通り、細胞実験においてEI236のアポトーシス誘導の検討を行った。ヒト由来扁平上皮癌OSC19細胞に新規磁性抗癌剤EI236を投与してフローサイトメトリーでアポトーシスの誘導を確認した。結果として、新規磁性抗癌剤EI236は濃度依存的にアポトーシスを誘導した。また、濃度依存的に初期アポトーシスから後期のアポトーシスへと移行した。また、新規磁性抗癌剤EI236が及ぼす細胞の遊走能を評価した。ヒト由来扁平上皮癌OSC19細胞を小型チャンバーに播種して、細胞が定着した後に新規磁性抗癌剤EI236の投与を行い、タイムラプスで24時間の観察を行った。結果として、新規磁性抗癌剤EI236は濃度依存的にOSC19細胞の遊走能を低下させた。本抗癌剤は、抗腫瘍効果を発揮するだけでなく遊走能を低下させることを証明した。 動物実験では、ヌードマウスBALB-c nu/nuの舌縁にヒト由来扁平上皮癌OSC19細胞(細胞数:5.0×108個)を局所注射で移植して、移植後16日、18日後、20日後、22日後にIVISによって舌腫瘍の頸部リンパ節転移に起因する腫瘍部発光の確認をした。後に舌癌部・転移リンパ節の組織標本を作成し、HE染色で評価を行った。摘出したリンパ節はHE染色で腫瘍原発部位の舌と同一組織型の癌真珠を伴う高分化型扁平上皮癌像を呈していた。この段階でヌードマウスに於ける舌癌頸部リンパ節転移モデルを完成させた。上記の実験結果を平成25年度の研究目的及び実験実施計画と照らし合わせると、記載事項の研究は過不足なく概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の実験では、ヌードマウスBALB-c nu/nuの舌癌頸部リンパ節転移モデルに新規磁性抗癌剤EI236を投与する際の最適濃度と投与量をLD50の理論に基づき検討していく。投与する薬剤の濃度と量が決定したら薬剤投与を開始する予定である。また、薬剤投与後は温熱療法の効果を期待して交流磁場装置による磁場印加を行っていく予定であるが、薬剤投与後からどれだけ時間が経過すれば舌から頸部リンパ節に薬剤が流入するかも検討する。上記治療を週3回の頻度で4週間継続する。更に、薬剤投与を行った際に交流磁場下における転移リンパ節の発熱をサーモグラフィーで確認した後に、腫瘍部を摘出してHE染色、TUNEL染色、鉄染色による病理組織学的検討を行う予定としている。また同時に、摘出したリンパ節からタンパクを抽出してウエスタンブロットで各種タンパクの発現を検討する予定である。予定していた治療を完遂した後、IVISによる腫瘍サイズの変化、肉眼的な腫瘍サイズの変化、病理組織学的に転移の有無、原発部位と転移リンパ節の大きさ、個数、節外浸潤の有無などを検討する予定としている。
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次年度の研究費の使用計画 |
動物実験にかかる経費が当初予定していた額よりも安価に済んだこと。また当該年度の研究成果の学会発表にかかる費用が安価に済んだため。 H26年度分の研究遂行にかかる消耗品、および国際学会での発表、論文投稿に使用する予定である。
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