抗癌剤による味覚障害の発生機序は未だ不明であるため、その解明を研究目的とした。多くの癌治療において適応のある内服抗癌剤のS-1をラットに投与した。3週間内服させたラットの舌を摘出し、味蕾を多く含む有郭乳頭の組織学的変化を観察した。その結果、S-1投与により、粘膜上皮や味蕾には形態学的変化は認められなかった。しかし、免疫染色にて 、上皮下層に存在する味神経線維の減少や神経節の変性が、S-1投与ラットに有意に認められた。それにより、S-1投与による味覚障害の発生機序は味神経の障害によるものと推測された。
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