研究課題
我々はテロメラーゼ活性を指標とした電気化学診断システム(ECTA)を用い、口腔癌患者のテロメラーゼ活性の測定が可能であることをClinical Chemistryにて報告した(Clinical Chemistry 59: 1, 289-295. 2013)。しかしながらこの報告では癌患者と健常者ボランティアを比べた結果であり、それらの中間にある前癌病変(白板症)や扁平苔癬といった粘膜疾患は含まれていない。白板症や扁平苔癬においてもテロメラーゼ活性が認められるとの過去の報告より、電気化学テロメラーゼ活性測定法を用いてそれらのテロメラーゼ活性を検出可能であると予測した。本研究の目的は臨床でよく遭遇する口腔粘膜疾患(白板症や扁平苔癬)を簡便かつ客観的に診断するためにテロメラーゼ活性を指標とした電気化学診断システムを構築することである。本研究では口腔癌患者30名、口腔粘膜疾患患者(白板症、扁平苔癬)30名および健常者30名から臨床サンプル(ブラシで口の中を拭い採取した口腔剥離細胞と生検組織のごく一部)を採取し、hTERT遺伝子のmRNA発現解析およびECTAによるテロメラーゼ活性の測定を行い、それぞれを比較検討した。hTERT遺伝子のmRNA発現量は健常者、口腔粘膜疾患、口腔癌の順で増加していた。ECTAの電流増加率も健常者、口腔粘膜疾患、口腔癌の順で増加していたが、hTERT遺伝子のmRNA発現量とECTAの電流増加率の間に相関関係は認められなかった。また口腔癌、口腔粘膜疾患と健常者を区別するために、ECTAのすべてのサンプルでROC解析を行い、ECTAにおける口腔癌のcut off値を17%に設定したところ、感度は88%、特異度は72%、偽陽性率は28%、偽陰性率は12%であった。
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Applied Biochemistry and Biotechnology
巻: 174 ページ: 869-79
10.1007/s12010-014-1030-z