研究実績の概要 |
脳神経発達期にあたる胎児期ー小児期の全身麻酔薬が成長発達に与える影響について検証するため、カスパーゼ3活性によって蛍光強度が変化する蛍光タンパクを全身の細胞内に発現するSCAT3遺伝子プローブを導入したマウスを用いて観察を行った。昨年度までにSCAT3遺伝子プローブの検証と遺伝子導入したマウスの継代維持、脳スライス標本の作成と顕微鏡下での観察を成功させた。 本年度は昨年度実施した顕微鏡下での脳スライス標本の観察を継続し投与する全身麻酔薬の濃度を変化させ例数を増やして検証を続けた。昨年度の課題であった温度管理に関して、灌流液中の温度を測定しながら加温装置を調整することで蛍光強度の変化がより安定して測定された。また組織内の酸素化についても組織内の酸素濃度を測定するプローブを使用し、灌流液中の溶存酸素によって十分に組織内に酸素が供給されていることを確認した。 本研究では全身麻酔薬として灌流投与が容易なプロポフォールを用いた。プロポフォール製剤の麻酔要素である2,6-ジイソプロピルフェノールを有機溶媒のDMSOで溶解して灌流投与した。プロポフォール群(2,6-ジイソプロピルフェノール+DMSO)において1μM、10μMの投与で、コントロール群およびDMSO群と比較し5時間後に有意なカスパーゼ3活性の上昇を認めた。 本年度までの研究成果をまとめInternational Journal of Developmental Neuroscience (DOI: 10.1016/j.ijdevneu.2016.04.007)に発表した。
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