研究課題/領域番号 |
25861984
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
井出 信次 鶴見大学, 歯学部, 助手 (00611998)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | レプチン / 創傷治癒 / 皮膚 / 口腔粘膜 |
研究概要 |
レプチンは遺伝性肥満マウスであるob/obマウスの原因遺伝子として1994年Zhangらに単離、同定された16kDaのタンパク質で主に白色脂肪組織から産生・分泌され、糖・脂質代謝促進、摂食抑制、エネルギー消費亢進など体重増加抑制作用を示す一方、近年骨形成、創傷治癒促進や血管新生に関与していることが示されているが、その詳細なメカニズムはいまだ不明である。一方、レプチン受容体は1995年に単離・同定され、視床下部、脂肪、骨格筋、肝臓などでその発現が確認されている。本研究では、皮膚創傷治癒におけるレプチンの影響につき検討するとともに、創傷治癒促進薬としてのレプチンの可能性につき検討した。 化学熱傷モデルマウスにおける皮膚創傷治癒過程において、レプチン投与により治癒期間を短縮できることを見出した。ヒト皮膚角化細胞および線維芽細胞においてもレプチン受容体の発現が確認され、レプチンがヒト皮膚角化細胞に対して増殖促進効果、遊走促進効果を有していることが明らかとなった。さらに、レプチン投与群において活発な血管新生が認められた。 化学熱傷モデルラビットの歯肉潰瘍の大きさは、6日目では両群間に有意差を認めないものの、13日目ではレプチン投与群において有意に縮小しており、治癒に要した期間もレプチン投与群において有意に短縮した。ヒト口腔粘膜上皮細胞株及びにヒト口腔粘膜線維細胞株おいてレプチン受容体の発現を認めたがレプチンによる増殖・分化促進効果は認めなかった。しかし、ヒト口腔粘膜上皮細胞株に対して遊走促進効果を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は本年度予定されていた実験である、正常マウス皮膚および正常ウサギ口腔粘膜におけるレプチン受容体の発現の検討、皮膚化学熱傷モデルマウスの作製、皮膚創傷治癒促進効果の有無の検討、創傷部における組織学的・免疫組織化学的検討をすべて行うことがでできた。 さらに次年度に予定されていた、口腔粘膜化学熱傷モデルウサギの作製口腔粘膜創傷治癒促進効果の有無の検討、創傷部における組織学的・免疫組織化学的検討、ヒト皮膚組織、ヒト口腔粘膜組織、ヒト皮膚角化細胞・線維芽細胞、ヒト口腔粘膜上皮細胞・歯肉線維芽細胞におけるレプチン受容体の発現の検討、ヒト皮膚角化細胞・皮膚線維芽細胞、ヒト口腔粘膜上皮細胞・歯肉線維芽細胞の増殖および分化におよぼすレプチンの影響の検討も前倒しで行えており計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、創傷部における組織学的・免疫組織化学的検討を以下のように行っていく予定である。 レプチンもしくはPBS貼付後、4、8、12、16日目に潰瘍部を含む創部歯肉を採取し、4%パラホルムアルデヒドにて固定後、パラフィン包埋し組織切片を作製する。作製した組織切片にH-E染色を行い、経時的に組織変化を観察するとともに、レプチン受容体、PCNA、EMA、cytokeratinなどについてその発現分布につき免疫組織化学的に検討する。さらにレプチンの血管新生への影響と創傷治癒との関連について検討することを目的に、血管内皮細胞マーカーであるCD31, CD34を用いた免疫組織化学的染色を行い血管内皮細胞数を計測、統計学的処理を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年ではin vitroの実験が順調に行えたため、培養に必要な消耗品を抑えることができたためと考えられる。 引き続き実験動物の購入費、免疫組織学的検討や細胞培養に必要な消耗品に利用する予定である。 また、実験結果の発表のため論文投稿料、学会参加のための旅費に利用する。
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