レプチンは遺伝性肥満マウスであるob/obマウスの原因遺伝子として1994年Zhangらに単離、同定された16kDaのタンパク質で主に白色脂肪組織から産生・分泌され、糖・脂質代謝促進、摂食抑制、エネルギー消費亢進など体重増加抑制作用を示す一方、近年骨形成、創傷治癒促進や血管新生に関与していることが示されているが、その詳細なメカニズムはいまだ不明である。一方、レプチン受容体は1995年に単離・同定され、視床下部、脂肪、骨格筋、肝臓などでその発現が確認されている。本研究では、皮膚創傷治癒におけるレプチンの影響につき検討するとともに、創傷治癒促進薬としてのレプチンの可能性について検討した。 化学熱傷モデルマウスにおける皮膚創傷治癒過程において、レプチン投与により治癒期間を短縮できることを見出した。ヒト皮膚角化細胞においてレプチン受容体の発現が確認され、レプチンがヒト皮膚角化細胞に対して増殖促進効果、分化促進効果、遊走促進効果を有していることが明らかとなった。さらに、レプチン投与群において活発な血管新生が認められた。これらのことから、レプチンよる創傷治癒促進効果は角化細胞の増殖促進、分化促進、遊走促進および血管新生促進によるものと考えられた。 化学熱傷モデルラビットにおける歯肉潰瘍治癒過程においてレプチン投与により治癒期間を短縮できることを見出した。ヒト口腔粘膜上皮細胞株においてレプチン受容体の発現が確認され、レプチンがヒト口腔粘膜上皮細胞株に対して増殖促進効果、遊走促進効果を有していることが明らかとなった。さらに、レプチン投与群において活発な血管新生が認められた。 本研究により、レプチンを創傷治癒促進薬として利用できる可能性が強く示唆された。
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