研究課題
若手研究(B)
再生医療は近年様々な領域で研究が推進されており、歯科分野においても、いかに生理的機能を持つ歯の再構築を行えるかが期待されている。しかし、歯の三次元的構築技術の開発において進展は見られるものの、形態制御の問題はいまなお未解決である。申請者の所属するグループの研究は、再正歯の大きさを特定する因子がIGF-1であるという知見を得たため、本研究においてはIGF-1を基軸とした歯の形態制御機構の解明を目的とした。本研究は、天然歯に類似した形態的特徴を持つ再生歯の作製技術の一助となり、さらには歯の再生の実用化に向けた基盤技術の開発が発展に寄与するという点で大きな意義がある。まず初年度においては、IGF-1により発現制御を受ける下流因子の同定のために、マイクロアレイによる網羅的解析を行った。マイクロアレイは、膨大な遺伝子群の中から、ある細胞現象に関わる遺伝子群の候補を検討するうえで有用である。ここでは、胎生14.5日齢のマウス下顎臼歯歯胚を用い、IGF-1添加、非添加下にて器官培養を行った。培養後、Dispase処理により上皮と間葉組織を分離した。得られた組織のRNAを精製し、マイクロアレイの試料として用いた。遺伝子発現のプロファイリングおよびクラスタリングの結果、IGF-1により発現変動が見られる遺伝子として、上皮組織および間葉組織とも歯の発生過程に関連する遺伝子が複数挙げられた。これらの因子について、発現パターンおよび機能の解析を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
初年度は、IGF-1が歯胚の遺伝子発現に及ぼす影響のマイクロアレイによる網羅的解析を行い、IGF-1により変動する関連遺伝子について、膨大な数の遺伝子から特定の細胞現象に関与する遺伝子の同定を行った。これらの結果のデータマイニングは、形態制御を受けた歯胚におけるIGF-1を中心としたシグナルネットワークのデータ構築を可能とした。以上のことから、当初の計画通りに進行しているといえる。
今後の計画としては、IGF-1により発現変動を示す因子が、歯胚上皮および間葉細胞の増殖、分化に及ぼす影響の解析を行う。さらに、IGF-1下流因子に着目し、発現様式と機能を解析する。ここでは、各種阻害剤を用い、IGF-1を経由するシグナル伝達機構を明らかにする予定である。これらの研究結果により、歯の形態制御におけるIGF-1シグナルネットワークの全容が解明され、より効率的な再生の形態制御法の開発を図る知見が得られると予想される。さらに、IGF-1のみならず、そのシグナルネットワークを応用した歯の再生医療の構築にも役立つことが期待される。
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The Journal of Biological Chemistry
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