研究実績の概要 |
ロイコトリエンはアラキドン酸から合成される局所の脂溶性メディエーターで様々な生命活動に関与するが、脂肪細胞分化における役割は不明である。本研究では、平成25年度に3T3-L1前駆脂肪細胞を用いて、ロイコトリエンと脂肪細胞の分化・成熟との関連を明らかにした。3T3-L1分化の過程でロイコトリエンB4(LTB4)経路を阻害したところ、成熟脂肪細胞への分化が阻害された。siRNAを用いてLTB4のGタンパク質共役型受容体であるBLT1、BLT2の発現を特異的に抑制したところ、成熟脂肪細胞への分化が阻害された。これらの結果から、LTB4-BLTシグナル伝達経路が脂肪細胞の分化に関与し、BLTのノックダウンが脂肪細胞の分化に抑制的に作用することを明らかにした。 microRNAは生体内に存在する小さな一本鎖RNAであり、動植物において核内での遺伝子転写後にタンパク質への翻訳を抑制することが知られている。microRNAは癌、炎症、動脈硬化などの様々な疾患との関連が報告されているが、代謝性疾患との関連は不明である。我々のこれまでの研究から非アルコール性脂肪肝炎患者の肝臓から採取した生検組織において、複数のmicroRNAの発現の変化が認められた。平成26年度は、これらのmicroRNAのうち2つ(miR-XX, miR-YY)を選出し、microRNAによる脂肪細胞の分化・成熟との関連を検討した。3T3-L1分化の過程でmiR-XX, miR-YYをトランスフェクションしてその発現を抑制したところ、成熟脂肪細胞への分化が促進された。miR-XX, miR-YYをトランスフェクションした細胞でDNAマイクロアレイを行ったところ、脂肪細胞分化・脂質代謝に関連する様々な遺伝子の発現変化が認められた。すなわち、脂肪細胞分化にmicroRNAを介した経路が存在することが示唆された。
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